ダウンロード違法化は5年遅かったのではないか?

現状理解

現状の著作権法30条の私的使用では,「著作物は、個人的または家庭内などで使う場合は使用者が複製できる」となっている.つまり,個人的・家庭内であればビデオにダビングしたり,CDをカセットテープに録音したり,著作物それ自体の“出自”などは問わないため、公開の形態が違法か合法かを問わず、私的利用であればダウンロードをしてもいいことになっていた.
これに対してアップロードの方は,送信可能化権というものを作り,これは「自分の実演を端末からのアクセスに応じ自動的に公衆に送信し得る状態に置く権利」「レコードを端末からのアクセスに応じ自動的に公衆に送信し得る状態に置く権利」のことで,つまりインターネット上で実演やレコードの内容をFTP(ファイル転送プロトコル)で配信したり、ストリーム配信するなどの場合、公衆送信権に基づき作詞家や作曲家など著作者(ただしJASRACに信託的譲渡されている場合が通常であることに注意)の許諾を得る必要があるだけでなく、実演家やレコード製作者の許諾を受ける必要がある*1…というもので,これを使って著作者やレコード製作者に許諾を受けていないアップロードを違法アップロードとして取り締まってきた.

ダウンロード違法化の動き

しかし,Winnyを使ったファイルのやり取りや,違法着メロサイトの利用なんかには歯止めがかからなかった.(違法着メロサイト自体は送信可能権で取り締まってきたけれど)
そこで,文化庁文化審議会著作権分科会・私的録音録画小委員会が「著作者に無許諾で動画や音楽をアップロードしたサイトからのダウンロードについて『情を知って』(違法サイトと知って)いた場合は、著作権法30条で認められている『私的使用』の範囲から外し、違法とすべきという意見*2」を出して,ダウンロードを違法化しようとした.

ダウンロード違法化反対の意見

これに対して今ネットユーザから反対意見が多く飛び出している.
例えば,MIAUの発起人 白田秀彰(法政大学准教授)なんかは,「先の私的録音録画小委員会の意見は権利者側に偏った面々によって作られた意見で,ネットワーカーたちが全く参加できていない」とし,「コレのどこが民主主義なのか?」と苦言を呈しているし,同じくMIAU発起人 小寺信良(AV機器評論家、コラムニスト)なんかは「元々この小委員会は”補償金*3の徴収方法や対象機器の範囲などを見直す”ことを目的として召集されたのに,出てきた結論が”ダウンロード違法化と著作権法30条の改正”で,しかも補償金の見直しは来年度に先送りする…という結果は,入力と出力にあまりにも違いがありすぎる」とし,この小委員会は「構造的欠陥があるのは明らかで,結論も無効だ」と発言したりしている.

他には,「ネットワークの自由には価値がある。」というMIAUの設立趣意書にも書かれているが,所謂ネット思想を振りかざそうとする人々や,それに付随するのだけれど,ダウンロード違法化が認められ,それを取り締まろうとしたときに,ネットワーカーのプライバシーが侵害されてしまうのではないか?*4といった意見もある.

ダウンロード違法化反対?

とにかくいろいろな意見が飛び交っている.私はもちろんダウンロード違法化にはとりあえず無条件で反対なのだけれど,微妙に反対側の意見に乗り切れないでいる.
何故なら,ダウンロード違法化を進めてきた人々が,泥臭く自分たちの既得権益を守ろうとしているのに対し,ダウンロード違法化に反対する人々も同様に,自分たちの既得権益(タダでおいしいコンテンツをダウンロードできる権利)を守ろうとしているようにしか見えないからだ.どちらも泥臭く,同じ地平で利権の奪い合いをしているなぁ,としか思えないからだ.
もちろんネットワーカーのために権利者と同じ土俵に立ち,顔を出して戦おうとしているMIAUは素晴らしいし,そういった動きも必要だと思うのだけれど……

ダウンロード違法化は5年遅い

とにかく私は権利者と同じ土俵に立ち泥臭く戦うことはしたくないのである.
私は,ネットワーカーらしくテクノロジーを使って彼らと戦っていきたい


恐れずに書いてしまうが,例えばWinnyのような非常に匿名性の高いシステムを考える.誰がアップロードしたのか?誰がダウンロードしているのか?誰がクエリ(ファイルを検索すること)を発行しているのか?どこに(物理的な位置)ファイルが存在するのか?…それらすべてが全く分からないようなプロトコルを作ってしまえばいいのだ.
そしてこの要求はP2Pアーキテクチャを使えば実現可能だと私は思っている.(Winnyもほとんどできてる)
そうしたアーキテクチャの上に,ファイル共有だけでなく,ニコニコ動画YouTubeのようなストリーミング技術や,2chのような掲示板や,FTP,ブログやホームページといったサービスを載せていくことだって可能だと思っている.


現在ネットワークの世界を支えている技術はIP(インターネットプロトコル)や,サーバクライアント型のネットワークで,これらの技術は第三者にトレースされたり,誰と誰が何をやり取りしているのか?が分かってしまう.この状況だと,ダウンロード違法化を進めてきた彼らに無理やり司法の場(現実世界)に引きずり出され,金をせびられてしまったり,犯罪者として祭り上げられたりしてしまう.


しかしP2Pアーキテクチャを使えば,そういった場に引きずり出されることはなくなる.ずっと匿名のままで,彼らには手の出せない世界に行くことができる
実際に現在P2Pを使って既存のプロトコルと変わる存在になろうとしているプロジェクトは多い.例えばHTTPに変わるものとして”BitTorrent”なんかがあり(匿名性とは関係ないけど),「BitTorrentはHTTPを置き換えるエレガントな代替物である*5」なんて発言している.



ダウンロード違法化問題:著作権がインターネットを検閲する - スポンサー広告ネットと著作権 アンチパイラシー活動
Youtube視聴は違法?:私的録音録画小委員会のひどい人選に絶望 - ITジャーナリスト三上洋 事務所
私的録音録画小委員会での著作権法第30条の議論の流れを整理してみた - picasの日記
ニコニコ動画が明らかにしたダウンロード違法化・著作権侵害非親告罪化の問題点 - Copy & Copyright Diary