DVDが売れない時代のアニメビジネスを考える

現状の”DVDを売って儲ける”といった形のアニメのビジネスモデルは崩壊しかかっている.
この”ネットの登場によって既存のビジネスモデルが破壊されてしまう”といった問題意識はDVDが売れない時代のアニメビジネス GDHに聞く - ITmedia NEWSでも取り上げられているように各所で持ち上がってきている.
これ以外にも例えば新聞やテレビといった今までメディアを牛耳ってきた巨大な集権的メディアで,「ブログの登場によってジャーナリズム(報道)の権限を維持することができなくなってきた.若者は新聞を読むのではなくて,ブログを読んでいる」「広告主がGoogleキーワード広告の方が,何人がクリックしたかやどのページから飛んできているのかを明確に把握でき,信頼できることに気づき始め,テレビCMや雑誌の広告の宣伝力を疑い始めている」といった問題として浮上してきている.

こういった問題を日本で語るときは何故かポジティブな意見でなく,ネガティブな意見が多い.それも犯人を追及するといった風潮になってしまう.
「テレビCMはHDDレコーダで飛ばしてみる人が多い.HDDレコーダでテレビCMを飛ばせないようにするべきだ」とか「ブログはジャーナリズムとしては不完全であり,彼らには責任感がない」や今回で言えば「売れなくなったのは,YouTubeファイル共有ソフトのせいである」といった見方をする人が多い.

まぁこういった見方を否定するつもりもないが,今回私は一切こういった考え方は示さない.とにかく楽天的にアニメビジネスの未来像を次世代のビジネスモデルを描いてみたい.

アニメビジネスの未来像

「DVDを売って儲けるといった形のアニメビジネスは崩壊する」これが私の認識である.そして「ダウンロード配信を軸としたアニメビジネスが確立する」これが私の描く未来像である.
この考え方は先のエントリでも示されているが,不完全すぎるので補足する.

  • YouTubeニコニコ動画と差別化を図るために当然高画質・高音質のストリーミング配信をする.

現状では,ストリーミングサーバの構築にお金がかかるかも知れないが,将来的に非常に低価格で高性能なストリーミングサーバを構築できるであろうという予想に依る.
また,こういったインフラを整えるには日本の市場が非常に適しているはずである.なぜならアメリカや韓国などのネット環境と比較すると,日本では高速インターネットの普及率が異常に高いからである.
このサービスは当然日本だけでなく,海外からもアクセス可能であるために

アニメDVDを海外展開する場合、字幕や音声、パッケージなどを海外仕様に作り変える時間が必要で、どうしても日本よりも後の発売になってしまう。このタイムラグのせいでビジネスチャンスを逃している面はある
DVDが売れない時代のアニメビジネス GDHに聞く - ITmedia NEWS

といった問題は解決される.

  • 低価格の実現とダウンロードの決済方法を手軽にする

iTunesでの楽曲ダウンロード同様に低価格で非常に簡単に視聴できるようにする.これにより,YouTubeで観るのと同様の手軽さで,ファイル共有ソフトを使ってダウンロードするよりも早く高画質で高音質なアニメが見れるようになり,違法に視聴しなくなる.(300〜500円程度でなんとかなるのではないか?と考えている.後述)
現在DVDの売り上げが不振なのは,「観たいときにすぐ観れない」といった点で問題でもあるからだ.高度情報化社会では新しい情報が次々に飛び込んでくる.そのため”Amazonで注文して届くまで待つ”・”DVDをレンタルしにいく”といった時間が無駄であり,もどかしい.

これにより,現在YouTubeニコニコ動画にアップロードされているアニメ本編映像を紹介しているサイトや,アニメのレビューを書き,その下にYouTubeの本編映像を貼り付けているブログなどは乗り換えるはずである.
また,404 Blog Not Foundのようなブロガーがアニメ本編を紹介してくれるようになり,宣伝効果も,高いお金を出して雑誌に掲載するよりも確実であり,効果を明確に計測できる.また出来高制であるために無駄な出費はない.正当な報酬だけを支払うだけで済む.
アフィリエイトの導入により,レビューサイトの品質向上が望める.これもまた宣伝効果は絶大だ.(効果的に宣伝をすればアフィリエイトが望めるので,現状のレビューサイトよりも宣伝効果のある(本編映像へ誘導するような)記事を書いてくれるようになる)

本編映像のYouTubeニコニコ動画ファイル共有ソフトへの流出は上記のような対応で抑えることができた.(ファイル共有ソフト,特にwinnyではニーズが減ると一気にダウンロードしにくくなる.)
しかし二次創作やMADは依然として投稿されつづける.が,このMAD(のニコニコ市場)に本編映像を見ることができるフォームを付けることができるようにし,「MADが面白かったから本編を観てみたい」という人を効果的に誘導する.
これにより,MADをCMのように利用し取り込むことが可能になる.これは同様に二次創作にも適応される.
またこの宣伝効果も明確にリアルタイムで計測可能でマーケティングにも役立つはずである.

  • ダウンロード数などでリアルタイムなランキングを表示するといった新サービスを提供する

「今人気のあるアニメ」を数字で明確にリアルタイムで計測し表示する.また,これはファンの購買意欲の促進にも繋がる.
ニコニコ動画のように皆でコメントしながら本編映像を楽しむといったサービスや,アマゾンのレビューのようにレビューを書くことができるといった新しいサービスも提供する.
上述したMADや二次創作を推奨するサービスとして,本編映像からMADや二次創作へのリンク(トラックバックのようなもの)を張る.これにより,本編映像を見た後も継続してその作品を楽しむことができるようになる.

本編映像だけでなく,OPやEDやキャラクターソングといった楽曲もワンクリックでダウンロードできるようにする.(もちろんこれもブログやニコニコ市場に貼り付けることができるようにする)

  • 究極的にテレビで放送するために必要なお金が一切かからなくなる

つまりテレビで放送しなくてもアニメビジネスは成立するようになる.
放送枠のためのお金やテレビ会社の仲介や指示といったものが一切なくなり,アニメ制作会社と視聴者が直接繋がっているエンド・トゥ・エンドな市場ができる.
ストリーミングサーバの維持費などが非常に安く抑えられたら,DVDの販売網の維持やテレビ放送にかかる費用などは一切かからないために,アニメ一本2000万円の制作費ならば300円で販売し,7万人程度が購入してくれればおつりが出る.(市場は世界中であるので実現不可能な数字ではないように思う)

おわりに

今元気のある会社やらサービスはWeb2.0の考え方をうまく使った形のものが多い.
Googleであり,Amazonであり,はてなであり,ニコニコ動画であり,セカンドライフであり,mixiであり,ブログであり…
そして,「ビジネスモデルが破壊される〜」とてんやわんやしているのは,既存権益にしがみ付いている企業や,メディアだ.

そしてネットで一番怖いのはこうやって女々しくしがみ付いている間に,ぽっと出の会社に市場をすべてもって行かれる恐れがあることだ.Googleだって高々できてから10年だし,YouTubeなんて始動してからまだ4年ぐらいだ.たった数人の手によって,信じられないほどの低資産で,全世界を席巻できてしまう時代なのだ.
アニメビジネスに関してはまだブレイクスルーが見えていないが,いつなんどき,画期的なビジネスモデルが現れるか解らない.今回語った夢物語も今はコストと技術的に難しいかも知れないが,そのうち実現するんじゃないか?と本気で思ったりしている.