らき☆すた・ハヤテ・グレンラガンのパロディの違い

今期はパロディ色の強いアニメが多数放送されている。
らき☆すた』や『ハヤテのごとく!』は当然だが、『天元突破グレンラガン』、『機神大戦ギガンティック・フォーミュラ』、『大江戸ロケット』や『アイドルマスター XENOGLOSSIA』なんかにも、意図的なパロディを数多く感じる。
しかしそれぞれの作品のパロディは、微妙に”質”が違うように思う。
見ている時に使っている脳の部分というか、皮膚感覚的なところで差異を感じる。
その違いが顕著に現れている3作品『らき☆すた』『ハヤテのごとく!』『天元突破グレンラガン』を、それぞれパロディの側面から分析し、何が違うのかを考えてゆきたい。

ネタとして掘り下げない『らき☆すた

らき☆すた』はもちろんパロディアニメだと思うし、掲載雑誌がコンプティークだということもあって、その辺のネタをいろいろと仕込んである。
しかしそれらのネタは出オチ(出てくるだけで終わってしまうネタ)として使われていることが多い。所謂”一発ギャグ”でしかない。
『らき☆すた』#4「やる気の問題」パロディ&ネタまとめ
なんかを見てみても、ネタとして繋がりのある部分が存在しない(無くは無いのですが)。

例えば、壁に西又の絵が飾ってある部屋が出てくる。このシーンは2、3度使われるのに、ギャグとして推敲したり、捻ったりはしてこない。
無限の住人やSHUFFLEのネタなんかも、一発ネタとしてしか機能していない。
元気玉やアスカのフィギュアも一発ネタであり、視聴者が「あ〜それ俺の部屋にもあるよっ!」と、作品に対してアクティブにツッコミを入れていくことで成立しているギャグのように感じる。

私にとって、とても淡白なパロディアニメという感じがしてしまうのは、そのためではないだろうか?
注:『らき☆すた』の5話以降に関してはこの考察は適用できない。

これに引き換え『ハヤテのごとく!』のパロディは一発ギャグも多いが、繋がりのあるギャグが多数存在する

2段3段オチの『ハヤテのごとく!

ハヤテのごとく!』第04話の副題「はぢめてのおつかい〜こちらスネーク。誰も応答しない」は、もちろん『はじめてのおつかい』と『メタルギア』のパロディなのだが
(上述した『らき☆すた』ならば、これでこのネタは終わりにするだろう。が、ハヤテではそんなことはしない。)
この話ではハヤテがバンダナをつけ、無精ひげを生やしたスネーク姿で登場する。
先ほどの題名が一段目のギャグだとしたら、無精ヒゲを生やし、バンダナをつけた不自然な格好でハヤテが出てくる。これが二段目のギャグである。
さらに『メタルギア』といえば、「ダンボールの中に隠れられる」という作品内のギャグ(メタルギアの世界でも”これ”はギャグとして出てくる)が存在するので、これをまたスネーク姿のハヤテにやらせる。

つまり、「名前を借りてくるだけの表層的な一発ギャグ」から「登場人物に変な格好をさせる」というパロディ元の作品と”物語”との表層的な融合をし、さらに「作品内のギャグを共有する」というメタ的な知識の共有へとギャグが進化している。

こうやって『メタルギア』というパロディを掘り下げて、2段3段オチのギャグとして成立させる。(流石、久米田康治の弟子)

固有名詞、名台詞に頼らないグレンラガン

グレンラガン』のパロディは、パロディ元の作品に出てくるキャラクターをそのまま出したり、固有名詞や名台詞を使ってみたり、背景に混ぜて登場させたりしない(ポスターやフィギュアなどにして)。

こういったレベルの低いパロディは使わずに、シチュエーションや登場人物の人間関係、物語の展開などを、物語の必然として話に上手くはめ込んだ形でのパロディを使ってくる。
ので、元ネタが解らない人でも純粋に楽しめるものになっているわけだ。
(パロディではなくオマージュの意に近いものになっている。)
グレンラガンあしたのジョーに対するオマージュで考察したようなネタが沢山あるわけだが、わからない人でも十分に楽しむことのできるアニメだと思う。

まとめ

らき☆すた』・『ハヤテのごとく!』・『天元突破グレンラガン』のパロディは順に

  • 表層的な部分で共有している知識、ビジュアル
  • 知識の追求・深い部分での共有化
  • オマージュ

と、レベルが違っているのである。