「パンツじゃないから恥ずかしくないもん!」とメタな話

今更ながらストライクウィッチーズについて語りたい.

名キャッチフレーズのメタへの誘導効果

パンツじゃないから恥ずかしくないもん!」という,この天才的な発明とも言えるキャッチフレーズは,我々を「パンツ論壇」という新たな境地に導いてくれた.

今考えれば,「パンツモロ出しじゃん!」とか「パンツアニメ過ぎる」といったツッコミから始まってた.(図参照)
パンツじゃないから恥ずかしくないもん!」という言い訳に対しては,違和感なく「パンツじゃなければ何なんだよ?」というツッコミを入れていた.
第7話で「パンツではなくズボン」と言われた時は,「パンツとズボンの違いって何だろう?」とか「そもそもパンツって何?」といった思考をし始めてた.
そして最終的に…

「バールのようなもの」と「パンツのようなもの」から考える『ストライクウィッチーズ』パンツ・ズボン問題 - noir_kかくかたりき改めnoir_kはこう言った
ブラウン管の中のパンツは絶対にパンツだとは言い切れず、パンツあるいは他の様々な物質である可能性が均等に存在する「不確定状態」なのです。

「パンツ」という存在自体に問いを投げかけている事
(中略)
それは、「パンツ」という存在とは何か? という若干哲学じみた事を提言しているように思えるのです。今までの「パンツ」をどう魅力的に、そして効果的に見せるかとは別のベクトルで、「パンツ」とは何か? 我々が認識している「パンツ」とは何か? 「パンツ」をというものをどう定義するのか? という、全く別の視点から「パンツ」というものとは何か?と視聴者に考えさせています。
「ストライクウィッチーズ」のパンツ論壇 - あしもとに水色宇宙

「パンツのようなもの」論壇 ストライクウィッチーズと安部公房とマグリット 価値観 - karimikarimi
ルネ・マグリットは、決して自分の作品を語らない。だから、この「これはパイプではない」の意味は想像するしかない。(つーか、その想像こそがマグリットの作品なんだけれど)「これは絵であってパイプではない」「これはパイプの絵では無い」「そもそもパイプとは何か」マグリットの「これはパイプではない」はこのような様々な捕らえ方を我々にさせる。
それを踏まえて考えると、もしかすると「パンツのようななにか」というのも、この「これはパイプではない」という意味なのかもしれない。「これはアニメの絵であってパンツではない」とか「パンツとはそもそも何か」などと言ったことを、我々に問いかけているのかもしれない。

という,わけのわからんことをウダウダ考え続けるパンツ論壇に行き着いた.


これってすごいことだと思う.
この「パンツ論壇」にたどり着くまでに無理がないというか,作品やキャッチフレーズによってミスリードされて,自然とメタ的な視点に誘導された…そんな感じがする.

誘導効果の有効活用

ストライクウィッチーズでは,この名キャッチフレーズの「視聴者を物語世界からメタ的な視点に誘導する効果」をうまく利用している気がする.


この作品は,ストライクウィッチーズをもっと楽しむために平行世界のお勉強 - WebLab.otaなんかでも紹介したりしたけど

ストライクウィッチーズ - Wikipedia
この物語における世界は、現実での1930年代から1940年代に近い設定になっている。地理的にも現実世界と似たものになっている
ストライクウィッチーズの登場人物 - Wikipedia
本作の登場人物は、大半が実在の第二次世界大戦期(例外あり)のエース・パイロットをイメージモデルとし、プロフィールやバックグラウンドの設定にそれらが反映されている。

という様に,物語や作中に出てくるキャラクターを楽しむだけでなく,現実世界・史実とのリンク構造を楽しむという部分がある.
こーゆー副読本やテキストを読むことで楽しみ方が増えていくタイプの作品って,物語世界にのめり込んで,登場人物たちと一緒に一喜一憂しながら作品を楽しむ人からは敬遠されがちだったりする*1
メタな視点を常に持ちながら,作品を楽しむことに慣れていない人なんかは,よく分からないといった感想を抱いてしまうかもしれない.


しかし,ストライクウィッチーズでは,パンツによる誘導効果が「補助線」のような役割をして,つい作品内に没入してしまいガチな視聴者も,メタ的な楽しみ方をしやすいようにできているのではなかろうか?

加えて,「そんなに物語に没入しなくてもいいですよ.むしろ,興味を持ったらエースパイロットの自伝とか兵器のこととかパンツ論壇とか,いろいろ調べてみてくださいね〜」みたいな……
「本作品をゲートウェイにして,知的興味範囲を拡大してください」って言われてるようだ.

*1:ストライクウィッチーズはのめり込んで楽しむことのできる作品でもあるけど