アニメギガ 板野一郎 〜マクロスからウルトラマン,そしてブラスレイター〜

ようやっとアニメギガ 板野回を見たのだけれど,ブラスレイター見るなら,この番組見た方がいいね.今回のアニメギガは板野さんがいろいろしゃべったり実演したりしてくれて,よかった(どうも板野さんはアニメーターやクリエイターの教育みたいなものに興味があるようで,資料とか解りやすい比較の実例を作ってくれたようだ).


今回の板野さんの話を聞いていて,長いスパンで見た,板野さんの「やってきたこと」,これから「やろう」と思っていることが見えてきたので,まとめてみる.

若さと遊びの身体性(初期板野)

板野さんは23歳という若さで『超時空要塞マクロス』のメカニック作画監督として個性を発揮する.マクロス

あそこまで複雑なデザインを立体的に動かすというのは,テレビでは「無理だから,やらない」っていう,そういう世界だったんですよ.あのいいデザインが,たぶん普通の会社で普通の作画の人がやったら台無しになる.(中略)自分だったらどの程度まで,このデザインをうまく動かせるのかな,っていうチャレンジ.(中略)動いても平気なようにっていう,そういう体制が当たり前だったところに,そういうことを一切知らない人が,「何でカッコいいデザインを描いちゃいけないの?」みたいな感じで,ポーンと叩きつけられたのがバルキリーで「どこまでできるか,このデザインやってみたいな」という形
アニメギガ 板野一郎

と,本人も語っているし,BSアニメ夜話でも「(マクロスは)壮大な実験作だった」と語られているのだけれど,やる気がめちゃくちゃあるけど頭の悪い若さをアニメ界に持ち込んだ.


板野サーカス」と呼ばれるアクロバチックなアクションシーンでは,『若い頃にバイクに乗って,ロケット花火の打ち合いをしていた』…という身体感覚・経験がいかんなく発揮されているし

マクロスプラス - Wikipedia
この作品のためにアメリカで模擬空中戦を体験したことから、戦闘機パイロットの皮膚感覚を伝えるよりリアルな描写へと進化している。

と,あるように,自身の経験からアニメーションのイメージを作ることに関しては天才的である.しかも,その昔荒くれだった(今でもそうだけど)板野さんらしい身体性をアニメーションの世界に持ち込んだ.

特撮にジャパニメーションのイメージを(ウルトラマン

次に板野さんは

CGでやるところはTVのクオリティを超えたい、そんな感じで作ってる。で、ジャパニメーションの付けPANとか、メリハリ、デフォルメをCG班に仕込んでるんです。「ネクサス」が好評で次のシリーズがあったら、円谷の社内のCG班は、かなりいいものが作れると思う。今度の12月からやる劇場(「ULTRAMAN」)で、「これだったらハリウッド・メジャーの映画と戦える可能性が将来見えてきた」と思えたんです。アニメーションの中では(中略)僕がいなくても、いいものが作れるので、自分は円谷に行って、円谷特撮を世界の土俵に
WEBアニメスタイル_アニメの作画を語ろう

という仕事を始める.
渡邊隆史氏が

実写のセンスをアニメに持ち込んだ板野さんが,今度はアニメのセンスを実写に持ち込んだ
アニメギガ 板野一郎

と言われているけれど,その通り.それにしても,板野さんは日本のアニメーションとか映像作品全般の底上げ・世界に通用する作品づくりを常に志向する人らしい(というか仕事をする時,これくらい壮大な理屈をつけないとモチベーションが上がらない人なのかも知れない).

自分の気持ちが煮詰まったり、モチベーションがなくなると、他の事をやりたいなあと思うんですよ。それで、今はCGをやっているんです。
WEBアニメスタイル_アニメの作画を語ろう

という飽き性なところもあるのかも知れないけれど.

特撮から得たもの(ブラスレイター

(最近は3Dばかりで手描きは辞めたんですか?という質問に対して)
今のジャパニメーションが,あと10年後にどうやって世界と,追い上げてくるアジアと目標にしているアメリカに対して,置いて行かれないで,追い越すことができるかという所では3Dの表現が,ジャパニメーションの2Dのキャラクターとマッチングする戦闘表現をデフォルトで作り上げていかないと,文化的にも競争力的にも置いて行かれちゃうんじゃないか.
(中略)
円谷特撮のいいところは(中略)どこの合成よりも「馴染ませ」がうまいというか.ウルトラマンや怪獣を実写のキャラクターを馴染ませる技術がすごく長けているんですよ.(中略)3Dの良さと,2Dの良さ,ジャパニメーションの良さをマッチングさせるところを特撮で学んで帰ってきましたね.
アニメギガ 板野一郎

カッコいいっすね,板野さん.この壮大な流れ(文脈)を理解してブラスレイターを見ると格段に面白い.



アニメギガ ゲスト:板野一郎 - sincerely my thought
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