ダウンロードしない時代がくる
前回のエントリ(ダウンロード違法化は5年遅かったのではないか? - WebLab.ota)からやっている,”ダウンロード違法化”をどうやって回避するか?という問題について考えて行きたい.
今のところ,このダウンロード違法化に対して,我々ネットユーザーが取るべき(取れる)対応は2つだ.一つはMIAUがやっている,顔を出し,声を上げ,ダウンロード違法化を進めている組織と真っ向から勝負を挑む方法だ.そしてもう一つは,ダウンロード違法化自体を無意味にするような…テクノロジーを使って回避する方法がある.
前回は後者の例としてP2Pアーキテクチャを用いて,「誰がアップロードしたのか?誰がダウンロードしているのか?誰がクエリ(ファイルを検索すること)を発行しているのか?どこに(物理的な位置)ファイルが存在するのか?…それらすべてが全く分からないような」技術を開発することを提案してみた.
そして今回も,後者について考える.
ストリーミングをダウンロードではないとする
今回の私的録音録画小委員会の著作権法30条を改正しようとする案では,YouTubeのようなストリーミング映像配信サービスを見るだけでは違法にならないという見方をしてしている.
「法改正後はYouTube見るだけで違法」は誤解、文化庁が見解示す
「視聴のみを目的とするストリーミング配信サービス(例 投稿動画視聴サービス)については、一般にダウンロードを伴わないので検討の対象外である」
(中略)
一部の新聞や雑誌で「YouTube」などの動画共有サイトを視聴することも第30条の適用から除外されるという記事があった(中略)この点については「誤解である」と述べ、視聴のみを目的とするストリーミング配信は一般にダウンロードを伴わないため、動画共有サイトを視聴するだけでは違法行為にはならない
この見解に対して,各所で「YouTubeやニコニコ動画のようなストリーミング映像配信サービスが,ダウンロードかどうか?」という議論がなされている.
YouTubeの視聴は「ストリーミング」ではなく「ダウンロード」です - GIGAZINE
「YouTubeを視聴しただけで違法」は誤解・・・には思えない現状の曖昧さ - スポンサー広告ネットと著作権 アンチパイラシー活動
http://bewaad.com/2007/09/30/286/
要するに,YouTubeやニコニコ動画というストリーミング映像配信サービスと謳っているサイトも,キャッシュという形でローカルなハードディスクに保存されるのだから,厳密に言えば”ストリーミング”ではなく”ダウンロード”である…といった見方だ.
確かに,この私的録音録画小委員会の言うところのストリーミングが,どんなものをさすのか微妙だが,とりあえず今回は,YouTubeのようなサービスもストリーミングであるとして,法改正の対象外であるとする.
つまり,今回はストリーミングという定義を「ローカルなハードディスクにキャッシュといった形でダウンロードされるが,ローカルなハードディスクへの永久保存や二次使用,複製を目的としていないダウンロード」として話を進める.
(ストリーミングって言ってもローカルなメモリの中にはロードするし,そのときにスワップが起きれば,仮想メモリというハードディスクに・・・もういいや)
ダウンロードしない時代
ちょっと昔の話をする.
ほんの数年前,ブログとかそういったものがなかった時代の話.その当時,ネットサーフィンをしていて,良いページや面白いことが書いてあるページや鋭い指摘をしているページや自分が興味を持っていることが書かれているページを私はコピーして保存していた.
何故かというと,今のブログのように,すべての記事に一つ一つユニークなURLが割り振られ,半永久的にそのURLさえブックマークにでも入れておけばいつでも読むことができる……という今では当たり前のことができなかったからだ.
ほとんどのHPではURLを使いまわして使っていて,URLだけ控えていても読みたいときには新しい別の記事になっていて,良心的なHPであればログの奥深くに埋まっていたりしたのだけれど,たまに消えていたりしたからだ.
しかし,今やそういった心配はほとんどない.はてなブックマークに入れておけば,いつでも好きなときに記事を読むことができるのである.ブログが世界に齎した革新的なものはここで,一つの記事をURLを使って一意に同定することができるところにある.
これは,音楽や映像ではないけれど,私的コピー(ダウンロード)しなくてもいい時代の前兆ではないだろうか?
確かに,ブログのエントリも,誹謗中傷が書かれていたり,著作権違反をしていれば,消される可能性がある……しかし,これはGoogleのキャッシュやプロキシサーバのキャッシュに残っている場合があり,みることができたりする.
クローニングは犯罪ではない…
ここで特に注目してほしいのが,Googleのキャッシュは著作権違反をしている文章だろうが,誹謗中傷だろうが,すべてクローニングしてGoogleのサーバにコピーしているところだ.
この行為が許されるのだとしたら,アルゴリズム(プログラム)によって自動的にネット上にあるデータをすべて浚って来ること(クローニング)は違法ではない…となる.(これは私的使用をしていないから?)
とにかく結論から言えば,日本中・世界中に個人でも組織でもいいけれど,多数のクローニングサーバを立てて*1,著作権違反のファイルだろうが,何だろうが,構わずキャッシュとして保存して,ネットワーク全体でそのコンテンツのバックアップを取るような体制を作る.(つまり一つのコンテンツをネット上で複数,分散的に保存する)
そして,そのコンテンツにアクセスしたいときは,そのコンテンツのURLか,URLから導出されるハッシュのようなものか,ファイル名から導出されるハッシュのようなものでアクセスできるようにする.
この時,もともとのURLが指すコンテンツが存在している場合は普通にアクセスするが,もし,何らかの原因(サーバが停止しているとか,削除されたとか)でアクセスできないときは,クローニングサーバのキャッシュにアクセスする……という形でコンテンツの分散的なバックアップとコンテンツへのアクセスを保障するシステムを考える.
このシステムなら,時間が経過するごとに,世界中に無数に存在するクローニングサーバーにコンテンツがコピーされ,分散して保存されるようになる.(もちろんアクセスして見たり聞いたりするときはストリーミング技術を使う)
つまり,YouTubeやニコニコ動画やその他サイトから何らかの形でコンテンツが消えてしまうことを恐れて,ダウンロードしてローカルなハードディスクに永久保存しようとするのではなく,クローニングサーバーを使って自動的に分散的に保存されていくことを信頼して,アクセスは,URLかハッシュでコンテンツに確実にアクセスできることを保障すればよいのである.