らき☆すたでみるプロダクト・プレイスメントの可能性

今回も”DVDが売れない時代のアニメビジネス”について考えてゆきたい.

プロダクト・プレイスメントとは

はてなの人たちならたぶん知っているかも知れないが,プロダクト・プレイスメントとは最近注目され始めている宣伝方法の一種だ.

プロダクトプレイスメントとは、テレビ番組や映画の中で企業の商品を登場させる宣伝広告の方法のこと。従来のテレビCM広告に変わる、新しいマーケティング(宣伝広告)の方法として注目が集まっている。

近年ではVHSビデオデッキやハードディスクレコーダーなどに「CMスキップ機能」が搭載されるようになり、テレビCMの閲覧頻度が大きく下がってきています。その為、番組の合間ではなく、番組そのものの中に商品を登場させて、企業が広告活動を行う動きが活発化されてきています。このように、テレビ番組や映画などと企業CMを融合させたマーケティング手法を「プロダクトプレイスメント」と呼びます。

欧米ではかなり盛んに行われており、アメリカのプロダクトプレイスメント市場は2004年度は34億ドル以上(約4千億円)に登ります。人気映画「007(ダブルオーセブン)」で、主人公・ジェームズボンドが乗るハイテク機器満載の車は、いつもBMW製ですよね。あれなんかは、プロダクトプレイスメントの典型的な例だと言えます。
プロダクトプレイスメント

こういった宣伝広告は近年,アニメでも取り入れられる機会が増え始め,例えば,コードギアスにやたらとピザハットが出てきたり,黒の契約者ニフティの看板がデカデカと登場したりするのも,このプロダクト・プレイスメントだ.

このプロダクト・プレイスメントが注目を集めるようになった理由は,一つには先に引用しているが,「CMスキップ機能」によってテレビCMを観ていない視聴者が増えてきたことがアンケート結果などによって明らかになったことだ.
特にアメリカでは,ハードディスクレコーダの普及率が高い.これは日本ではあまり見かけないサービスなのだが,月額でハードディスクレコーダをレンタルするといったサービスのおかげで,低所得者・学生にもハードディスクレコーダが普及しているためである.

もちろんハードディスクレコーダだけでなく,YouTubeニコニコ動画にアップロードされることも考慮に入れ,CMをカットしてアップロードされても宣伝広告としての機能が維持されることを期待している.


もう一つには,インターネット広告の登場で,宣伝効果を正確に計測できることが当たり前といった意識が生まれ,テレビCMや雑誌広告などに対する不信感が高まったことだ.
インターネット広告,つまりバナー広告やキーワード広告などは,表示された回数や広告がクリックされた回数や,どこから来て,どれくらいHPに滞在して,どの商品を買ってくれたかをすべて把握することができる.
これに対して,テレビCMや雑誌広告は,実際の宣伝効果を計算することが難しい.このため,”グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する 文春新書 (501)”で「オーバースペック」と呼んでいたが,「雑誌広告やテレビCMといったマスに対して宣伝するために多額の投資をしても,宣伝効果がほとんどなかった」という状態に陥りやすい.
ネット広告の場合は,宣伝効果を正確に把握することができるために,それに見合った報酬を出せばよい(アドセンスなど).


こういった状況があり,プロダクト・プレイスメントは今マスメディアで,ネット広告と渡り合っていくための宣伝広告のあり方として期待されている.(しかし,このプロダクト・プレイスメントも決定打ではないといった見方が多い)

アニメビジネスの中の広告

以上,新しい宣伝広告のあり方としてプロダクト・プレイスメントがあることを説明してきたが,そもそもアニメビジネスの中で宣伝広告の占める割合が低いことを知っている人にとっては,このプロダクト・プレイスメントがアニメビジネスと直結しないかも知れない.
(アニメ・特撮の親会社・制作会社の商品(玩具)を宣伝するものなんかは古くからあるが,これは別物として考えたい)

確かに,現状のアニメビジネスは,上述しているが,”DVDを売って儲ける”といった形が主である.
しかし,このDVDを売って儲けるといったビジネスモデルが崩壊しかかっていることは,周知の事実である.で,あるから,「アニメビジネスの中で広告が占める割合は低くて当たり前」といった前提から見直す必要があると考える.
(また,アニメビジネスの中で広告が占める割合が低いのは,アニメビジネスが主にターゲットとしているオタク層は,ビデオやハードディスクレコーダなどのAV機器を使いこなせる人が多く,CMなどの広告は早々に撤退したことにも留意しながら考察したい)


アニメの中でプロダクト・プレイスメントという宣伝広告は,上述したコードギアス黒の契約者

球漫画「MAJOR(メジャー)」の主人公、茂野吾郎投手が使うグラブやバットはすべてミズノ製――。架空のスポーツ選手に対する独占的な用具提供契約を、スポーツ用品最大手のミズノが出版元の小学館と結んだ。<漫画の主人公とミズノが契約 野球用具を独占提供 - asahi.com : 文化芸能>

といった例があるが,あまり効果を発揮していないように思える.
というより,プロダクト・プレイスメントを取り入れた作品や,商品が本当に少ない.

らき☆すたでみるプロダクト・プレイスメントの可能性

アニメにおけるプロダクト・プレイスメントという宣伝方法がシェアを広げない理由は,その宣伝効果がいかほどのものなのか,まだ解っていないところにあるのではないだろうか?(そもそも日本におけるプロダクト・プレイスメントのシェアは欧米に比べると遥かに低い水準であるけれど)


しかし,今回のらき☆すた聖地巡礼騒動を見ていると,地域活性化や観光地宣伝といった特定の地域に土着した形での宣伝効果はアニメで十分に期待できるのではなかろうか?そうした可能性をみせてくれたと思う.
http://zbzbm.hp.infoseek.co.jp/kikaku/moetown/rakisuta.html
http://guideline.livedoor.biz/archives/50937966.html
痛いニュース(ノ∀`) : 聖地巡礼の「らき☆すた」ファンが地元住民に不審者扱いされる - ライブドアブログ
らき☆すた de 聖地巡礼 〜鷲宮神社編〜 - SEVENTH_HEAVEN
Yahoo!ニュースに取り上げられるほどの騒ぎになったこの騒動.果たしてどれくらいの人間が聖地に足を運んだのかは解らないが,経済効果も相当にあったはずである.


この騒動で面白かったのは,実際に存在する背景や,町並み,建物,お店をバックにアニメのキャラクターたちの生活を描写すると,「行ってみたい」と思考するオタクたちが相当数いるということと,ちょっと前の韓流ブームでも同じように,「あの場所に行ってみたい」と思考し,金や時間を惜しまず本当に出かけていくのは,主婦層とオタク層以外で存在しないところだ.
あのときは旅行会社などが総出で,暇とお金を持て余している主婦をターゲットにして,いろいろと試行錯誤していたが,今回のらき☆すた騒動ではあまりそういった動きが見られない.
しかし,実際に存在するお店や公園やテーマパークなどをアニメを使って宣伝することの有用性みたいなものが見えてきた…そんな気がする.

おわりに

今,クール・ジャパンや麻生さんの提唱している「漫画・アニメを国策として推奨していきましょう」という動きに便乗する形で「地域活性化に一役買いますよ?」と売り込みに行ってもいいのではないだろうか?と本気で思っている.



CM広告費とテレビアニメ制作費 - Obra de Sobra よしなしごと