ニコニコ動画をビジネスに…

最近『ニコニコ動画』をビジネスに利用しようといった動きが実世界・ネット世界でいろいろ議論されている.

私もアニメやニコニコ動画に関するビジネスモデルについていくらか考えてきた人間なので触れておこうと思います.

お金やスペックの問題は…

ニコニコ動画を「ビジネス」として成立させるなら - Attribute=51
とはいえ、サーバ代でニコニコ動画がてんてこ舞いなのは周知の通りで。
それだけじゃなく、帯域の使用量が大きいから
『もう「お金払えばできる」という次元じゃなくなってきている』という問題もあったりします。

なんてサーバの維持費なんかを気にしている人がいましたが,これは既にブレイクスルーとなるであろう技術が開発されています.
詳しくはハイブリッドP2Pを使ったアニメビジネスを考えてみる - WebLab.otaを読んでもらいたいけど,要するに,ハイブリッドP2PJoost)を使ってストリーミング配信をすれば,サーバに負荷(お金)を掛けずに,動画配信サービスができます.しかもコンテンツに対するコントローラビリティは普通のストリーミング配信サーバと同程度あります(削除したりできるということ).

P2Pテレビの「Joost」を試してみた − @IT
見た目の印象はDVDよりやや悪いという程度だが、映像は安定しており、ブロックノイズや途切れが発生しない

既存の試みを見てみる

404 Blog Not Found:ニコニ考 - 給料より安い制作費
考えても見て欲しい。絶望先生クラスであれば、現状ですら一話につき10万回は視聴される。これは一回100円で元が取れる、ということだ。この金額は、偶然にもiTunes StoreのPPVとほぼ同額。しかもニコニコ動画の画質は、iTunes Storeより上なのだ。
さらにAT-Xのように、包括プランを用意してもいい。たとえば月1500円で深夜アニメ見放題。集まった料金は視聴回数に応じて再配分。それで視聴者は、制作会社自身がうpした公式の動画を良心の呵責なしに見れるのだ。

ニコニコ動画を「ビジネス」として成立させるなら - Attribute=51
だから、弾さんの考えはとても良いとは思うんだけれど、けれどそれは、iTunes Storeの仕事であって、ニコニコ動画の領域じゃないと思うんです。

この二つのエントリのような,コンテンツに対してお金を払わせるべきか?あくまで無料に拘るべきか?といった対立は実は海外で既にやられていたりします.
これは先ほども出した”Joost”というハイブリッドP2Pを使った動画配信サービスとiTunesの対立が,それだったりします.

iTunesはインターネットがDVD市場を置き換えることを可能にするのに対し、JoostはこれまでのTVの代わりになります。
「iTunesがDVDの代わりならJoostはTVの代わりに」--Joostの新CEOインタビュー - (page 2) - CNET Japan

そしてdankogai氏の提案している”アニメ制作会社と視聴者をエンド・トゥ・エンドで繋げよう”といった試みも音楽業界で既に行われています.

http://i.impressrd.jp/e/2007/08/28/130
アーティストが自分で販売したい音楽を登録し、著作権を保持したまま販売する。配布は同社のサーバーからでもP2Pでも構わない。つまり、アーティストとユーザーを直接結ぶオンラインのエンド・トゥ・エンド・ビジネスである。もちろん、中小の独立系レコード会社が保有音楽を登録することもできる。

これは,たけくま氏(アニメ産業に関する公文書: たけくまメモ)が指摘したようなアニメ制作会社より上位の組織にお金を吸い取られてしまうことはなく,レコード会社や他の組織を除外したビジネスモデルを作ることに成功しています.

ニコニコ動画の進むべき道は…

などなど,いろんな議論を踏まえた上で,最上部で挙げたような「ニコニコ動画の進むべき道」を考えることは非常に重要だと思う.どんどんやってほしい.


とにかく日本ではあまりこういった議論がなされていないという現状があったりします.日本のテレビ業界や音楽業界など,すでにビジネスモデルが確立している組織はとにかくネガティブだったりもします.
そういった風当たりの厳しい日本ですが,ニコニコ動画オタク文化だけでも頑張って良いサービスになってほしい…



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