センサネットワークのプロトコル トポロジ

適応型トポロジ

適応型トポロジはノードを高密度に配置し,必要最低限ノードを動的に利用することにより,ネットワーク全体の寿命を伸ばす手法である.

ライフタイムを伸ばす方法として,ノードの電力がなくなrまで1台ずつ利用していく方法と,すべてのノードの電力を徐徐に利用していく方法があり,多くの提案方式は後者を選択している.

適応型トポロジの課題は,ノードの通信デバイスの活動・休止のスケジューリングだけでなく,アプリケーションの要求にあったトポロジを自律分散的に構成し,ネットワークの寿命を伸ばすことである.しかし,これには次のようなトレードオフが存在する.

  • 休止状態のノードが多い場合:活動ノード間の距離が遠くなり,エラー率が高くなる.通信電力の増加やデータ再送により送信電力が増加する可能性がある.また,センシング領域にも影響を与えるため,これらの領域を管理する仕組みが必要となる.
  • 活動状態のノードが多い場合:不必要なノードがアイドルリスニングになっているため,省電力の観点では効率が悪い.また,短い距離でデータ通信が頻繁に起こると,干渉によりネットワークの輻輳が起こる可能性がある.
Span

Spanは,ネットワーク内の全ノードに対して接続性を提供できる最小限のコアノード(コーディネータ)を活動状態にして,その他のノードを休止状態にしておくことで電力消費を抑えて,ネットワークの接続時間を向上させる手法.すべてのノードは必ず1台以上のコーディネータと通信可能な状態となっている.図1はSpanのイメージを示す.

図1:Spanのイメージ

コーディネータになるか否かの判断は,電力残量や近隣ノード同士の接続性などの情報を用いて判断する.電力残量の多いノードや近隣ノードが多く存在するノードほど,コーディネータ通知メッセージを送信するまでの遅延時間が短くなり,コーディネータになり易くなる.もし自分がメッセージを送信する前に他のノードからコーディネータ通知メッセージを受信した場合は,再度自分がコーディネータになるか否かを判断する.

GAF

GAFは,各ノードがあらかじめ位置情報を知っていることを前提として設計されている.ルーティングの役目となる活動状態のノードを動的に変更し,それ以外のノードを休止状態にすることにより省電力を実現し,ネットワーク接続時間を増加させる.

GAFの特徴は,位置情報を利用して物理的な空間を仮想的に格子状に区切ることである.仮想格子は,一辺がrの正方形とする.電波到達距離Rがあらかじめわかっているとすると,隣接する正方形の中で最長の距離となる対角線の長さは  \sqrt{r^2+(2r)^2} となる.この最長の長さがR以下であれば,隣接する正方形の中のノード同士は必ず通信が可能となる.そのため [tex: r\

  • 探索状態のノードが探索メッセージを活動状態のノードから受け取った場合.

活動状態のノードは,T_dの感覚で探索メッセージを送信することになっている.
活動状態のノードが自らの予想存続時間と比較して,より大きな値の予測存続時間を含む探索メッセージを受け取った場合
図2の右側に状態遷移図を示す.

活動状態のノードが送信する探索メッセージには,T_aが含まれている.休止状態に遷移するノードは,その値から休止期間を計算し,活動状態のノードの活動状態が終了するタイミングで探索状態に遷移する.活動状態であったノードはT_a経過後,探索状態に遷移するが,電力残量が少なくなっているため,他のノードが活動状態になる可能性が高くなる.

また,活動状態のノードが移動するような場合,格子内に活動状態のノードがいなくなってしまうことが考えられる.これを避けるため,格子の大きさと移動速度から活動状態のノードが格子を抜ける時間を計算する.移動状態のノードが送信するT_aの最大値は,その時間によって制限される仕組みが備わっている.

トポロジ制御

センサネットワークの省電力アプローチとして,トポロジ制御という技術がある.

数メートル先のノードとの通信に数百メートルの通信距離を送れるほどの電力を使うのは効率が悪い.また,通信距離が長くなるということは他のノードの通信にも干渉してしまうため,帯域の利用効率も悪くなる恐れがある.

ノードが設置される密度と電波到達距離をある程度想定し,平均近隣接続ノード数nを満たすためにはどれくらいの通信距離に設定すればよいかを計算する方法がある.図3では,左側に示されているトポロジをトポロジ制御により,平均近隣接続ノード数2で送信電力を調整した結果を示している.

図3:トポロジ制御の例

また,全体で結ういつの条件を満たす通信距離を導くのではなく,各ノードの通信(ユニキャスト,ブロードキャスト)において,近隣ノードとの位置関係に基づいて送信電力量を動的に調整する方法がある.

他には,移動可能なノードを想定し,図4に示すように通信経路のノードを直線で結ぶように移動させる.クラスタ型でアクセスポイントとなるノードをクラスタメンバの重心に移動させたりする方法がある.

図4:移動ノードによるトポロジ制御の例



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