通信網が断絶している被災地と通信する方法
いまだに固定電話・公衆電話・携帯電話・インターネット等を満足に利用することができない被災地(東北地方太平洋沖地震における)が多いようである。
そのため、被災者が、避難所の掲示板といった非常に原始的な手段を使って情報収集・交換を行っている姿をテレビで良く見る。
本稿では、この状況を打開する手段を考える。
モバイルアドホックネットワークの利用
まず考え付くのは、モバイルアドホックネットワーク(以下、MANET)の利用。
この技術は、最近では、エジプトの国内外において2011年1月より発生した大規模な反政府デモでの利用が検討されてたもので
http://alfalfalfa.com/archives/2125831.html
先週、エジプト政府が国内のインターネット網を遮断してから数時間後、意外な連中が状況打開に乗り出した。
(中略)
エジプトにある普通のノートパソコンをインターネットルーターに転換するソフトウェアを現地に送りたい、そのために力を貸してほしいというものだ。
このソフトを使って、パソコンからパソコンへメッセージを順次送っていく形の通信網「メッシュネットワーク」を作ろうというのだ。世界の技術者たちはこのメッセージを次々に広め、「オープン・メッシュ・プロジェクト」への協力を申し出た。
ルーター機能を生かせば近くの人との通信は可能になる。もしネットワーク内の1台がダメになっても、
別のパソコンを通じたルートを探してメッセージを伝達できる。「携帯型の臨時ネットワークは作れる」とピシェバーは言う。
「最低でもエジプトの人々は連絡を取り合って団結することができる」
(中略)
といったもの
(上記の記事では、メッシュネットワークと書いてあるけれど、こーゆー場合、端末の移動も考慮したMANETの方が良い気がする*1)
そもそもMANETなどの技術は今回のような、通信インフラが利用できないときに、容易・安価*2で構築可能なネットワークとして開発が進められているものであったりするので、是非利用したい。
http://ito-lab.naist.jp/themes/MobileComputing/index.html
モバイルアドホックネットワーク(MANET)は,災害時など通信インフラが利用 できない環境においても,ユーザにネットワークサービスを提供できる可能性 を持っています.
といっても、このMANETを構築するには、MANETのアプリケーションをインストールしたノートPC*3を、インターネットと接続できる地域から被災地の間にばら撒く必要がある。
11nが250メートルまで通信できそうなので、11nの無線通信が可能なノートPCを250m間隔で敷き詰めていく。なかなか大変。
2.4GHz無線LAN 屋外遠距離通信用 八木式指向性アンテナ|WLE-HG-DYG
両側にWLE-HG-DYGを設置した場合、最大2kmまで通信が可能です。 (5mケーブルWLE-CC5使用の場合)
といったアンテナを使えば、距離を稼ぐことはできる。でも大変。
iPhoneもAndroid端末もテザリングできたりする機種は、PC<-->iPhone、PC<-->Android間でアドホック通信できているわけだから
後は、マルチホップ通信(モバイル端末がルータの機能を持ち、通信パケットを中継すること)をする機能を実装できれば、iPhone・Android端末も中継ノードとして利用できるはず。
加えて、iPhone同士、Android端末同士、iPhone・Android端末同士のアドホック通信ができるなら、ノートPCを被災地まで敷き詰めるより通信範囲を拡大できるんじゃないだろうか。
DTNの利用
しかし、やっぱり被災地まで端末を敷き詰めるのは大変なので、DTNの利用を考える。
この技術は、
DTN とは - Networkキーワード:ITpro
DTN(delay/disruption-tolerant networking)は,中断や切断が多発したり,大きな伝送遅延が生じたりする“劣悪な”通信環境でも,信頼性のあるデータ転送を実現する通信方式である。もともとは惑星間インターネットといわれる宇宙空間の通信手段の研究から生まれてきたものだ。
といったもの。
図で仕組みを簡単に書くと
こんな感じ。
先のMANETの機能(ルーターのような機能)に加えて、メッセージを保存する機能と、移動して別のネットワークに接続したら保存しているメッセージを転送する機能が必要になる。