コンテンツの品質の話

「品質」という概念の価値が相対的に下がっている | fladdict
コンテンツの「品質=価値」という原則は、「顔の見えない大多数の大衆に対し情報発信しコミュニケーションしリーチする必要がある」、という前提があって初めて成立する。
(中略)
ネットや携帯電話等によって特定のコミュニティへのピンポイントなリーチが可能になればなるほど、「品質」の持つ、不特定多数にリーチさせる機能の必要性はなくなっていく。
(中略)
カラオケや話題、ネタレベルのコンテンツ、そして社会に露出する必要のない狭いコミュニティ(2chやニコニコがその象徴)上でのコンテンツほど、品質以上に「即時性」、「コンテクストへの非依存性」、「会話の誘発性」、「突っ込まれビリティ」などの価値が上昇していく。結果、コミュニケーションの踏み台にすぎないコンテンツでは、品質の価値が限りなく0に近づいていく。

ニコニコ動画のコンテンツはショボイよね」という話である.…ニコニコ動画のコンテンツのショボイ理由は品質という価値が相対的に下がってきているからではないか?という分析である.
確かに,ニコニコ動画にアップロードされるコンテンツの質が低いことは,ある程度認めざるを得ないし,品質が下がる理由(品質が求められていない理由)が,ニコニコ動画の構造的な部分に問題がある(別に問題では無いんだろうけど)という考え方もある程度妥当だと思うのだけれど,ちょっと書いてみたい.

別にニコニコに限った話ではない

というのも,この「コンテンツの質の低下」という問題は別にニコニコ動画内に限ったことではない…と私は思っているからである.(先のエントリもニコニコ動画が象徴的なものであると述べているだけですが)
私は(個人的にだけど)ニコニコ動画内だけでなく,小説だって,アニメだって,漫画だって,エロゲだって,どの媒体・メディアであろうとコンテンツの質の低下を感じているからである.

痛いニュース(ノ∀`) : “素人”の書いた「ケータイ小説」がベスト3独占、出版界に大きな衝撃…07年ベストセラー文芸部門 - ライブドアブログ
ケータイ小説」がベスト3独占、07年文芸部門
2007年の書籍の年間ベストセラー(トーハン調べ)が4日発表され、女子中高生に愛読されている「ケータイ小説」が文芸部門のベスト3を独占、ベスト10では5作がランクインした。

文芸書が売れない中、“素人”が書いた小説が次々とミリオンセラーになる現状は、出版界に大きな衝撃を与えている。

集計期間は昨年12月から今年11月。1位は上下巻で累計200万部の美嘉著「恋空」(スターツ出版)。この作品は映画化され、公開1か月で240万人を動員する大ヒットとなっている。2位、3位には上下巻で計100万部のメイ著「赤い糸」(ゴマブックス)、美嘉著「君空」(スターツ出版)だった。

なんかに現れてきていると思うのだけれど(このニュースが直接質の低下を表しているものではないとは思うが),「安い・早い・うまい」って感じでどんどん作られ,また消費されていく作品にしろ,「すぐ泣ける・超感動・全俺が泣いた」みたいな文句が飛び交っている市場にしろ,胡散臭いものは山ほどある.
Fateは文学」でもいいし,「CLANNADは人生」でもいいし,それを笑っている人々が消費している作品でもいいけれど,「何故これが…?」みたいな気分になることはよくある.

<コンテンツ―コンテナー>モデルは正常に機能しなくなる

コンテナーがコンテンツに対して優位性を保つようになってしまうと,コンテナーが自分の都合のよいコンテンツだけを選別するようになってしまい冗長性が失われてしまう.冗長性が失われれば,コンテンツの質は自然と低下していく.
『次世代ウェブ グーグルの次のモデル 』著:佐々木俊尚

これは,つまり「コンテナーに乗せなければ(音楽であればメジャーレコード会社とか,アニメなら地上波とか),どんなに質の良いものを作っても売れない」という状態が権威化して,「コンテナーに乗せれば(手法化された乗せ方に沿う商品であれば)売れる」という状態にまで行くとコンテンツの質は低下するという話である.
そして,佐々木俊尚氏は音楽業界は既にそういった硬直状態になってしまっていると指摘している.

漫画評論家夏目房之介BSマンガ夜話で「漫画という媒体は,市場が正しく分化されてしまって,堅苦しい状態になってしまっている」なんて趣旨の指摘もあった.


先のエントリは,「社会に露出する必要のない狭いコミュニティ上のコンテンツは品質が求められていないので品質が低下する」という結論に至り,こちらは,「マスメディアは堅牢化すればコンテンツの品質が低下する.そして今その堅牢化した状態にある」という結論に至っている.


この問題に対する解決策なんかは次の機会に考えることにする.とりあえず今日はここまで