センサネットワークのプロトコル データリンク層
データリンク層の役目は,物理的に直接接続されたオード間でもデータ通信を実現することにある.
ノードが設置されている機関と比較して,ノードが実際に通信を行っている期間は非常に短い.よって,理想的なデータリンク層はデータの送受信の間のみ通信デバイスを動作させ,それ以外は休止させておく.
なぜなら,無線通信では,データを送受信していないときの通信デバイスの活動(アイドルリスニング)は送受信時と同程度の電力を消費するからである.
MACプロトコル
MAC(Media Access Control)プロトコルとは,データリンク層で利用するプロトコルのことである.
MACプロトコルは大別すると,コンテンション方式とスケジューリング方式に別けられる.
コンテンション方式
IEEE802.11で規定されているCSMA/CAが有名であり,不特定多数のクライアントが無線帯域を共有する際に高い性能を示す.スケーラビティの点ではスケジューリング方式よりも優れているが,ノードがデータを送受信していない間も通信デバイスを動作させておく必要があり,消費電力の点で効率が悪い.
スケジューリング方式
TDMA(Time Division Multiple Access)が有名であり,利用する無線周波数を短時間のスロットであらかじめ区切ってクライアントに割り当てる方式である.
データの送受信時以外は通信デバイスを休止させておくことが可能であるため,省電力の観点では理想的.しかし,ネットワーク内のノード数を把握しておく必要がある.
センサネットワークでは数百〜数千個のノードが動的にネットワークに加わったり,離脱したりする可能性があるため,ノード数の把握は困難であり,TDMAではスロットを細かい粒度に区切る必要があるため,制度の高い時刻同期が必要である.
- スケジューリング方式
LEACH(Low-Energy Adaptive Clustering Hierarchy)
LEACHはTDMAをセンサネットワークに適応させた仕組みである.
LEACHでは,各ノードがあらかじめネットワーク内で望ましいクラスタヘッドの割合を知っていることが前提となる.クラスタヘッドの割合が少ないと通信電力が多く必要となり,クラスタヘッドの割合が多いと休止できるノードが少なくなるので,省電力の性能が低くなる.
各ノードは一定間隔で,自分がクラスタヘッドになるかどうかを判断する.選択した乱数k(0
S-MAC(Sensor-MAC)
S-MACはコンテンション方式をセンサネットワークに適応させた仕組みである.
図2に示すようにS-MACでは,通信デバイスをフレーム感覚と呼ばれる周期的な感覚でリスニングと休止を行っている.リスニング期間は全体の10\%程度の期間が推奨されている(1〜10\%).
送信データを持つノードはリスニング期間中にRTS(Rewuest To Send)を送信し,CTS(Clear To Send)を受け取るとすぐにデータの送信を開始する.データの送受信が開始すると,その送受信が完了するまで休止状態には遷移しない.
図2:S-MACでのデータ転送
この仕組みを実現するためには,送信ノードは受信ノードのリスニング期間がいつであるのかを知らなければならない.このためS-MACは,近隣ノードに対して自らのスケジュールを通知する仕組みを備えている.この通知は,リスニング期間に遷移した直後のSYNC期間に送られる.
S-MACでは,すべてのノードのスケジュールが同期することを理想としているが,マルチホップ通信でのスケジュール通知には時間がかかり,複数のスケジュールをもつノードが存在する.
S-MACは拡張機能として適応型リスニング機能(図3)を追加している.従来の方式では,一周期ごとにデータを1ホップしか送信できなかった.そのため,ホップ数が多くなる通信ではデータ到着までの遅延が増加する.適応型リスニング機能では送受信ノード間でやり取りするRTS/CTSを聞き,それらを受信した近隣ノードはデータの送受信が終わるタイミングで一時的に休止状態からリスニング状態に遷移する.
一方,受信ノードはデータ受信が完了するとすぎにRTSを送信する.そうすると,次のホップノードが上述した仕組みでRTS/CTSを聞いていれば,このタイミングでリスニング状態になっているため,すぐにCTSを返すことが可能である.
これにより,2ホップの連続的な送信が実現できる.
図3:S-MACでの適応型リスニング
センサネットワークのプロトコル トポロジ - WebLab.ota
センサネットワークのプロトコル データリンク層 - WebLab.ota
センサネットワークのプロトコル 位置測定 - WebLab.ota
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