少女メディア研究 海外の(やおい)漫画事情
前説
学部講義の履修選抜試験はこんなんでした:夏目房之介の「で?」:オルタナティブ・ブログ
現代マンガ学講義(夏目房之介) 2008年4月 選抜試験
60年代のアメリカ
今週の少女メディア研究(二回目)@魔王 - きゅーぶろぐについて,ちょこちょこ突っ込む
海外(ここでは主にアメリカ)のマンガは低年齢層向けのマンガか成人男性向けのシリアスなマンガが中心で、ティーンエイジャーや女性向けのマンガはほとんどなかった(70年代には少なくとも存在せず)。女性向けに男性が作ったマンガは存在したが、内容が反ロマンチックであり、恋愛の要素を省いて女性の持つパワーを描こうとしたために人気が出ず、60年代ごろに衰退した。
これはBSマンガ夜話『カスミ伝S』の夏目の目の解説で夏目房之介先生が
実は,日本で1960年代に起こったマンガの青年化というプロセスはフランスでもアメリカでも起きている.アメリカの場合は,そのときに何が起きたかというと,(中略)ものすごい社会的なバッシングが起こる.そのために青年化しつつあった・多様化しつつあった,ガールズコミックっていう少女マンガもあったけど,叩かれてアングラ化した.(中略)結果スーパーヒーローの類型だけが残る.
ヨーロッパ,これはフランスですけれど,やっぱり1960年代に青年化が起きます.で,ベースになっているのは「タンタン」とか「アステリスク」とか子供向けのマンガです.ところがそこからアート化して,「メビウス」とか「エンキ・ビラル」「アットッティ」,今アートとして有名なコミック作家がでるんだけれど,要するに,(中略)子供向け(フランスでは「ベーベー」という)の「べーべー」と大人向けのコミックの間が無いんです.
と言っておられたし,これを受けて
岡田氏:50年代から60年にかけてどういう時代か,というと,第二次大戦で大量の若者が復員してきた.町の中に,若くて元気のいい奴で,職が無い奴がバーっと溢れちゃったんで,いきなり社会に暴力が溢れて
大槻氏:ジェームスディーンですよ.要するに「理由なき反抗」ですよ.
岡田氏:ケネディ暗殺が起こって,とにかく,アメリカにはこんなに暴力が溢れるんだということで(中略)一番最初に犯人にされちゃったのが,マンガと映画とテレビだったんだよ.
(中略)
夏目先生:だから冷戦構造がバックにあるの.
とも語っておられた.人気とか面白くなかったとかではなく,表現規制によって発展しきれなかったという理解の仕方もある気がする.
やおいの持つ意味
ジェンダーの操作。平等な関係。
悲劇の恋。
「妊娠」、「結婚」ぬきの安全な「純愛」。
いいね.私はこのやおい(つーかBL)は好き.でも
最近では少女マンガでもBLややおいに代表される記号性が重視されている。リアリズムだとか女性解放だとか社会メッセージだとかはあまり好まれない。
と書かれているので,やはり腐っていくのか…と思うと憂鬱.
その他気になるデータ
アメリカでは80年代ごろからマンガ人気が始まる。2003年以降は毎年100%の市場成長率を誇り、2005年お市場規模は2億700万ドル。
一方日本は出版物の4割をマンガが占めるという、マンガ大国。1995年の時点で市場規模は60億ドル。
(注:この4割というのは出版物の割合で,売り上げの割合じゃないと思われる.売り上げでは1/4ぐらいなはず*1 )
日本では20から49歳の女性のうち42%、10代の女性のうち81%が少女マンガ読者。
BL、やおい読者は2003年時点で推定50万人。
アメリカでの週間少年ジャンプの読者20万人のうち約3割が女性
*1:要するにマンガが安い