東方がニコニコでウケた理由

「東方シリーズが何故ニコニコ動画でウケたのか?」,「東方とニコニコ動画の類似点・親和性」…そんなことについて書く.

東方界隈における創作活動

東方は特殊な作品である.
その特殊さは,原作と二次創作物の関係性が,単純な従属関係では説明できないところにあると私は思っている.
……彼らの作る同人誌には,原作には全く(ほとんど)描かれたことがないようなキャラ同士の人間関係や性格,過去・出自,などの設定がコレでもか!ってぐらいに出てくる.しかも量を読んでいくと,その原作には描かれたことのない設定を東方界隈全体で何となく共有しているらしいことが解って来る.
さらに,にわか東方ファンには,どう頭をひねっても原作と繋がりそうにない設定でも,彼らの頭の中ではなんとなく繋がっているらしいことも解って来る.


この複雑で解りにくい原作と二次創作物の特殊な関係は,彼らが何年間も続けてきた,これまた特殊な創作活動に原因がある.
彼らの続けてきた特殊な創作活動とは,二次創作で生まれた新しい設定を共通の財産として共有しあい,その共通の財産を使って二次創作活動をする…というものである.
つまり,原作の著者(この場合はZUN)が考え出した設定だけでなく,誰かが発表した二次創作物で生まれた良い設定・良いアイディアを使って,また別の誰かが,さらに良い設定・良いアイディアを考え出して二次創作物として発表し,またそのアイディアを使って,また別の誰かが二次創作をする…というアイディアの連鎖反応とでもいうべき現象(二次創作活動におけるスパイラル現象)が頻発する創作活動を続けてきたのである.


この結果,複雑な化学反応がおきる前と後のように,原作と二次創作物の特殊な関係ができあがったのだと私は理解している.
(この現象を追体験できた者たちは本当に楽しかったろうと思う.何しろ,自分たちのアイディアが自分たちの愛する作品をどんどん豊かにしてゆき,しかもその化学変化は日単位で起こり続けるのだから)

ニコニコ動画で行われているオープンソース現象

ココまで来れば解ってもらえると思うが,この創作活動は,以前このブログで考察した「ニコニコ動画で行われているオープンソースの概念を導入した創作活動」と酷似している.
ニコニコ動画で行われているオープンソース現象 組曲『ニコニコ動画』 - WebLab.ota
http://wiredvision.jp/blog/hamano/200711/200711011100.html
とりあえず,この創作活動の構造的な類似点がニコニコ動画で東方が流行した理由」だろう…というのが私の現時点での理解である.
(つまりニコニコ動画内で行われている特殊な創作活動に,東方という作品を持ち込むとき,プロセスモデルが同じだったために移植しやすかったのではないか?ということ)

東方とニコニコ動画の方向性の違い

しかし,創作活動のプロセスモデルは類似しているが,どうも方向性は違うようであるなぁとも思っている.
ニコニコ動画は最近,国際交流?に力を入れているクリエーターが出始めたし,言語も文化も違う新しい人々を参入させる方向に動きつつあるように見える.
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1553720
日本人が台湾人にお返しの組曲作ってみた - ニコニコ動画
せっかくだから台湾人258人で一緒に組曲『ニコニコ動画』を歌ってみた! - ニコニコ動画
組曲『ニコニコ動画』を英語で歌ってみた - ニコニコ動画(マレーシア人ww)
逆に東方はヌルい人間を排斥しようとする傾向が強いらしい.
コミュニティの内圧を高めるためや統制を取るため(いきなり人数が増えていろいろと面倒が多いらしい)の策だと私は理解している.


この同じプロセスモデルを使った創作活動がこういった違う方向性を示したことは非常に面白い(できれば原因究明とかしてみたい).またこの二つのコミュニティが今後どのような遷移を辿るのか…楽しみである.