サマーウォーズの掘り下げない姿勢

毎月1日は1000円デーってことで見てきた.
ので,感想を.ネタバレするんでよろしく.

結論

をいきなり書くと,この作品はありとあらゆる点で掘り下げていない.たぶん,あえて掘り下げてない.
だから,この作品を見て,「現代の失われた家族の姿が〜云々」とか「ネットの姿云々」とか,そーゆー問題意識で語っても仕方がない.
掘り下げているところがあるとすれば,「徹底して掘り下げないこと」である.

描かれていない部分

サマーウォーズにみる、表層の豊かさと、深層の軽薄さ - 未来私考
いわゆる非コミュ的問題を抱えた人や家族という形態に不信感を持つ人たちのアレルギー的な拒否反応を呼んでいる。そういった心象を持つ人たちが仮託すべきキャラクターがちゃんと用意されているにも関わらず。
(中略)
家族の外の世界が見えない

とかで書かれているけれど,この作品はフってあるのに描いてない部分があまりに多い.


私が気になってるところは,まず,OZのインタフェース.
いったいあのアバターをどうやって操作してるのかわかんねぇ.
キーボード,携帯,ゲーム機,電話の子機…いろんな形で操作できるようだけど,どーやったらあんな操作が可能なのか?
電脳コイルみたいにインタフェースと操作のイメージをしっかりと描写しているものに比べて,まったくイメージがわかない
次に,暗号解読もわからない.

サマーウォーズ:曜日の求め方とか2056桁の暗号とかの解説 - A Successful Failure
Athlon2.2GHzのPCを連続稼働させて2048bit(10進数で617桁)の因数分解にかかる時間はおおよそ10,000,000,000,000,000年だ*5。つまり10進数2056桁の因数分解は手計算では何兆年かかっても解けない。一晩で手計算なんてとんでもない。暗算なんてできっこない。鼻血をだすぐらいじゃ絶対無理である。
よい映画だけに、まともな科学考証がなされてないことが実に惜しい。誰かアドバイスできる人はいなかったのか。

なんて書かれているけど,ほんとどーやって計算してんだろうね?
作品内での説明は,「数学オリンピックの日本代表にあと少しでなれた人」ってだけ.
逆に言ってしまえば,この作品は,これだけの説明で「納得しろ」と言っているわけだ.


電脳コイルみたいに,「電脳世界のイメージを掘り下げたい」のならば,もっと「OZシステムのインタフェース」を描くはずだが,そうしない.
SFみたいに,暗号解読を掘り下げたいなら,もっとツッこんで考証するはずだが,そうしない.
だって掘り下げる気が端から無いのだから.
話を戻すが,核家族・大家族,家族の外の世界,非コミュ的問題もたぶん掘り下げる気がそもそも無い.

掘り下げない姿勢

この作品の「掘り下げない姿勢」はいろんな部分で徹底されているように思う.
情報処理関係で言えば,「プログラムの開発者の罪」ってのもフッてあるだけで何も問いただしていない.(P2Pソフト関連とかで話題になった問題)
SNSやブログ,掲示板の書き込みによる炎上の問題もちょこっと触れただけで放置.


ギャグなんかもそう.
この作品は,ギャグで話を持っていく部分がかなり多いけど,ギャグとして面白いか?と言われれば微妙.
お婆ちゃんが死んだことを知って,今まで相当悪ぶってた侘助が,高級車ボコボコにしながら戻ってきて半泣きになってるところとか,あれたぶん笑うところなんだけど,イマイチ笑えない.
でも,それでいい.

あれだよな。海外のコメディードラマ?みたいに笑い声が入ってればもっと軽くなってよかったのになぁ。

というポストを作品見た後にしたけど,こーしちゃうと,「笑い」として掘り下げて行ってしまうのでだめなんだと思い直した.


また「泣き・感動」って部分もそう.
突然,お婆ちゃんが死んで,あれで感動しろって言われてもねぇ〜って感じだが,それでいい.

振り下げない姿勢=つまみ食い

で,この掘り下げない姿勢ってのが活きてるなぁ〜って思うところは,いろんな問題意識やジャンルやテーマがこれでもか!ってぐらい入ってることかな?
少年漫画的展開あり,ラブコメあり,泣きありギャグあり
池沢佳主馬の声をわざわざ谷村美月にして,ボーイズラブ臭出してみたりもそれだと思う.
(この作品では,こいつ以外男のキャラには男の声,女のキャラには女の声を当ててる.狙ってるよな〜どう考えても)