「ツンマゾ! ツンなお嬢様は,実はM」は素晴らしいラブコメである

美少女文庫えすかれ「ツンマゾ!」がものすごく面白い 秀逸なドM美少女 - karimikarimi

ヒロインは、調教されたいがために、主人公に対して「自分を調教するように」調教を始めるという、不思議な二重構造が始まります。これが見事なのです。

この本は,id:makura_aが私に勧めてきて,それを私がid:karimikarimiに勧めたものなんですが,楽しんでくれているようで何よりだ.
karimiさんがお勧め記事書いたから,俺は適当にレビューというか感想をば.(と思ったが,お勧め記事になってしまったw)
大量にネタバレしますんで,そこんとこよろしく.

ブコメとして普通に面白い

「私がマゾで変態であることを知った以上、恋だの青春だの青臭いことは言わせないんだから。あなたの平凡な人生は今日で終了! おめでとうございます! 今日からアナタはドSの変態ご主人さまよ!」
「い、いやいやいや、俺は純愛派なんだ!」
ツンマゾ! p31〜p32

「純愛したい純情少年」と「調教されたいドM少女」のすれ違い劇という関係を思いついた時点で,作者はかなり面白い人だけど,ブコメとしても十分にキュンキュンできた.


ラブひなの4巻あたりだったか,瀬田さんが登場して景太郎が身を引くあたりで感じた,あのキュンキュンを感じることができた.
ラブひなで何故キュンキュンしたかというと,やっぱり「もどかしい」からだ.
成瀬川は「瀬田さんは昔好きだった人だから今は違う」というが,景太郎は,東大卒のカッコイイ瀬田と自分を比べて勝ち目がまったくないから,成瀬川の言うことが信じられないし,成瀬川のためを思っても身を引くべきだと考える.
成瀬川も「瀬田さんは昔好きだった人だから今は違う」ことが通じないのを憤り,そしてまた,何故こんなに憤っているのか?その理由を認めたくない・認められない…
そんなもどかしさにキュンキュンしたのだ.


これをツンマゾ!でやると

一時の快楽に狂って健児を失うのはあまりに惜しい.なんだかんだで,彼はよく付き合ってくれている.思わずMの股がキュンとくるほど,S役を演じるのがうまいのだ.
演技――なのだと思っている.根っこにSっ気があるのは確かだが,人間は根っこだけで構成されている生き物でもない.無味乾燥で地味な顔立ちも彼の性格の一面を現しているはずだ.
(中略)
「……バッカみたい.年頃の男が便利な肉便器を手放すはずないじゃない」
(中略)
(でも,いつかは……ザーメンまいれの淫乱顔で街中を闊歩してみたいなぁ)
甘美な妄想でぐふふと笑いながらトイレを出て,保健室を目指して方向転換した.
「真子ちゃん……泣いてるの?」
ツンマゾ! p145-146

「嘘よ.私だってバカじゃないんだから.わかってるわよ,アンタが私のために演技してくれてるってこと」
いや,そうじゃなくて――と,同じ言葉を繰り返すのは芸がないような気がして,口ごもってしまう.
ほんの一瞬,ふたたびの沈黙.それが肯定を意味する沈黙だと取られかねないことに健児が気づいたのは,真子の悲痛なうめき声を聞いてからだった.
「ううぅぅ……やっぱり演技だったんだ」
ツンマゾ! p165

こーなる.
健児は「演技ではない」というが,真子は,ごく普通な恋愛を望むごく普通の地味な少年である健児が真性のSであると信じられないし,無理やり(年頃の男であることに漬け込んで)付き合わせている自責の念とむなしさから涙する
健児も「演技ではない」ことが通じないのを憤り,そしてまた,自身が真性のSになっていくのを認めたくない・認められない…(健児は「純愛したい」と思っているから)
うん.もどかしい.


さらに,ツンマゾ!ではもう一つもどかしい要因がある.
上のが主人公がSかどうか?をめぐるもどかしさだとすれば,こちらは直球で,ヒロインが主人公のことを好きかどうか?をめぐるもどかしさである.

「ちょっとお見舞いしたぐらいで距離が縮まったとか,対等になれたと思わないでよね.あんたはただのご主人さまで,私はただの奴隷.格が違うのよ,格が」
(中略)
ボディーブローを食らった気分で,健児は返す言葉を失った.
浮かれていたのがバカバカしくなってくる.
この鷲尾真子という少女にとって,北野健児はSMプレイの相方でしかないのだ.恋愛対象にはなりえるはずがない.
ツンマゾ! p139

「そ,そういうのじゃ,ないの……!い,いじめられるのが好きなだけ,だからぁ……!」
(中略)
「べつに北野健児という個人のことを対等に好きとかじゃなくって……よしんば好きだとしても,媚びへつらって下から見上げる犬始点の好意ってだけなの!」
ツンマゾ! p203

と終始,真子は「主人公を好きである」ことを認めようとしない・認めない.
この辺のやりとりも非常にもどかしくキュンキュンさせてくれる.


最後の最後で主人公はこれをひっくり返す秘策を繰り出すのだが,それは読んでカタルシスに震えてほしいなぁ〜.

ツンマゾ!―ツンなお嬢様は、実はM (えすかれ美少女文庫)

ツンマゾ!―ツンなお嬢様は、実はM (えすかれ美少女文庫)




「ツンマゾ! ツンなお嬢様は、実はM」は素晴らしいエロラノベである - 鍵っ子ブログ
美少女文庫えすかれ「ツンマゾ!」がものすごく面白い 秀逸なドM美少女 - karimikarimi