プリンセスラバーは「好きなもの同士がどう成就するか?」を楽しむゲーム

アニメが予想以上に面白かったため,血迷って原作ゲームをプレイしてみたら,これも予想外に面白かったのでレビューしてみる.

「好きなもの同士がどう成就するか?」を楽しむゲーム

最初,予備知識無しでこのゲームをプレイすると,どーしても

とりあえず展開が速いなぁ〜という印象.いつからお互いが好きあってるのか全然わからん.

という感想を抱いてしまう.
読者の知らない間に主人公はヒロインのことを凄い好きになってて,歯の浮くような台詞をバンバン吐く.(ヒロインの魅力について,読者に全然説明していない段階で好きになってる)
ヒロインもヒロインで,「何時お前そんなに主人公のこと好きになってンっ!?」ってぐらい猛烈に(狂ったように)好いてくれている.
この辺に引っかかってしまうと,非常に気持ち悪くて,全然物語の中に入っていけない.


しかし,このゲームは,

「好きになる工程」を楽しむゲームではなく,「好きなもの同士がどう成就するか?」を楽しむゲーム

である.
なので,キャラ分岐に入った瞬間,「主人公はヒロインのことが好き」だし,「ヒロインは主人公が好き」になっているモノとして読むのが正しい.
だから,「好きになる理由は何?」とか「何故ここ(肉親を捨てるほど)まで愛し合っているんだ?」という疑問に対する答えや説明は一切ない.


これは,このゲームが「ヌキゲー」であることに因る気がする.

「ヌキゲー」である以上早くエロシーンに行く必要がある.
しかし,「陵辱ヌキゲー」じゃなく「純愛ヌキゲー」なので,「最初はレイプでだんだん両想いになる」という展開が使えない.
また,設定上幼馴染(昔から好きだった)とか登場させられない.
それでいて,淫語・アヘ顔(近年のエロシーンの流行)を盛り組みたい.
……という状況で,ならばいっそ面倒な「好きになる工程」をぶっ飛ばしてしまえ.

っというロジック.
「好きになる工程は意図的に削られているんだ」と思って読めば,そんなにイライラしない.


で,綺麗さっぱり「好きになる工程」がなくなってしまった代わりに,「好きなもの同士がどう成就するか?」がテーマになってきているわけである.
この辺の捻り方(偶然な気もするが)は,ちょっと感心した.

成就への障害と解決法

で,各ヒロインの恋愛の障害とその障害をどのように乗り越えて,結ばれるのかをまとめるとこーなる.

  • シャル
    • 障害:主人公の祖父が結婚に反対,ヒロインの両親が結婚に反対(許婚が他にいる)
    • 解決:主人公は肉親を捨てる.ヒロインも同様に肉親+国民を捨てる→駆け落ち
  • 聖華
    • 障害:主人公の祖父が結婚に反対,ヒロインの両親が結婚に反対.加えてヒロインには夢がある
    • 解決:ヒロインは夢を選択する.主人公は,ヒロインの夢を優先し,かつ恋愛も成就させるために,肉親を捨てる
      • 後述するシルヴィアシナリオもそうだけど,このシナリオの主人公はすごい女っぽい役割を演じてる
    • 障害:主人公の祖父が結婚に反対・ヒロインが優柔不断
    • 解決:主人公が祖父とヒロインを説得
  • シルヴィア
    • 障害:ヒロインの誇り・アイデンティティの喪失.国の存亡や「死ぬかもしれない」という大状況
      • 他のキャラクターとの差:両親ともに結婚を支持してくれている
    • 解決:主人公が「止めたって無駄だって解ってるわ・・・いってらっしゃい」とか言ってくれる嫁(はじめの一歩の伊達さんの嫁とか,そんな感じの女)的役割になってヒロインを支えて状況を打開する

っと,結構いろんなパターン(障害)が出てきて,それなりに解決法も違って面白い.
「愛し合っているし,別れることが死ぬことよりつらい!……でもっ!!」ってシチュエーションのオンパレード.


ただ実際にプレイすると,優シナリオだけが格別に面白くない.まぁ理由は簡単で,「障害が少なすぎる」これに尽きる.
こんなの恋愛成就(物語)の障害になってない.
もうちょっと捻って欲しかったなぁ〜というのが身勝手な読者の意見.


あと,シャルシナリオも王道過ぎてつまらないってのがある.
(途中意味深な仕掛けを出してきたりしたんだけど,「なーんだ」程度のものでつまらなかった)
どーもライターさんが下手糞で,王道を盛り上げ切れない(仕掛けが下手糞)という致命的欠陥があるらしい.

所感

しかし,主人公の無責任で無鉄砲でバカなところは正直イライラするww
もうちょっと精神年齢上げられなかったのだろうか?
女性陣は最終的に魅力的な女になるんだが,主人公のガキっぷりが凄まじい.

女性陣の成長

  • シャル
    • 与えられた環境で育てられたお姫様(結婚まで親から与えてもらっている)
      • しかし,主人公との愛を知ることで,自分の意思を持ち,肉親と決別することを選択する
  • 聖華
    • 敵対していた主人公の祖父から認められ,大人の価値観を理解できるようになる
  • シルヴィア
    • 愛すべき者・帰りたい場所を得て,強い信念と”実を伴った誇り”を持って生きていけるようになる
    • ??

まとめるとこんな感じかな?

キャラクターの攻略順

このゲームは,マルチエンディングの癖に「キャラクターの攻略順」がある臭い.
このキャラクターの攻略順は強制じゃないので,どーゆー順番でも攻略できるんだけど,一応制作者側が意図している攻略順というものがある.
それは,「シャル→聖華→優→シルヴィア」という順番.

シャルシナリオでは聖華がときどき現れて,主人公に好意があるように振舞ったりする(シャルの台詞:「聖華さんって,もしかして哲平のこと……!」とか聖華の台詞:「すこしだけ,彼女(シャル)がうらやましくなったわ」みたいな台詞を吐く).
聖華シナリオでは,聖華:「ふ〜ん……そう,あんた……そういうわけ」聖華:「いいわよ.受けてやろうじゃない.負ける気なんてさらさらないけどね」優:「……」という会話があったりする.
優シナリオでは,シルヴィアが「つくづく鈍い方ですよ」と主人公にボヤくシーンがあったりする.

という感じで,読者を誘導しようとしている.


こーゆー試みもちょっと面白い.