けいおん!12話のライブシーンが何故感動的なのかを解説する

今回は,けいおん!12話の「ふでペン 〜ボールペン〜」演奏シーン(唯がギターを取りに帰って学校まで走って戻るシーン)の約2分間の演出について解説したい.


このライブシーンでの演出意図は,視聴者を如何に唯に感情移入させて,次に唯が歌う「ふわふわタイム」のカタルシスを作るか?ってところにある.

近づいていくカメラ


唯がギターを取りに帰って学校まで走って戻るシーンの約2分間はざっくり説明すると

俯瞰カメラ(客観)(左上図)→ロングショット(中央上図)→ウェストショット・カメラとの間に障害物(電信柱)が横切る(右上図)→ウェストショット(左下図)→アップショット(中央下図)→主観ショット(右下図)

という順番でカメラがどんどん唯に近づいていって,最終的に内面描写になっている.
あの怠け者な唯が一生懸命,必死に走っていて,それを視聴者が「がんばれ!もうちょっとだぞ!」って応援する.
これに応じるかのようにカメラがどんどん唯に近づいていくことで,視聴者の感情移入を誘導している.


まぁなんというか視聴者をキャラクターに感情移入させるときのお手本のような演出である.
しかし,この2分間にはもっと細かい,「唯に感情移入させるための演出」が盛り込まれている.

1話と同じようで違うシーンが入り込む


1話では尻餅を着いていたけど,12話では踏ん張ったり

1話では急いでるはずなのにパンを咥えて出て行っていたけど,12話では真剣そのもの.

1話では遮断機が上がりきるまで待っていたけど,12話では待てずに潜ってたり
1話ではたくさん寄り道してたけど,12話では一心不乱に走っていたり……


こーやって1話と比較して,「如何に唯が真剣であるか」を執拗に描写している.
しかも,この1話からの「唯の成長」を表すカットが入るたびに,カメラが近づいたりしている.
(上で説明したカメラの動きに,1話と違うカットを並べるとこーなる↓)

俯瞰カメラ(客観)→尻餅を着かない・パンを咥えない→ロングショット→1話で寄り道をしていたときのカット→ウェストショット・カメラとの間に障害物が横切る→遮断機が待てない→ウェストショット→アップショット→主観ショット

さらに…

これらの演出に加えて,「唯の内面の独白」や「他のキャラクターとの思い出」が描写される.

さらに,歌いだし(左図)ではこんなに大人しく歌ってた澪までもが,唯の必死さが伝わったかのように熱く歌うようにもなる(右図).

俯瞰カメラ(客観)→尻餅を着かない・パンを咥えない→ロングショット→1話で寄り道をしていたときのカット→ウェストショット・カメラとの間に障害物が横切る→澪の歌ってるカット→遮断機が待てない→ウェストショット→アップショット→主観ショット


なんつーか使える技を全部つかって盛り上げようとしてる.
うん.どーしたって盛り上がっちゃうよね.




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