何故政治にネット規制反対派の声が届かないのか?

ダウンロード違法化に続いて,ネット規制推進派が爆走中である.それに対して各所で悲鳴が上げられている.
日本のインターネット産業に大きな節目?--自民と民主が重要法案を準備 - CNET Japan

インターネットの歴史を知っている人ならすぐ気づくと思うが、これは1996年にアメリカで成立した通信品位法(CDA) と同じだ。これに対して消費者団体ACLUが訴訟を起し、1997年に連邦最高裁違憲判決が出て、CDAは葬られた。それ以来、この種の規制は表現の自由を侵害するもので、公権力は介入すべきではないし、その効果もないというのが世界の常識だ。インターネットには国境がないのだから、国内法でそんな規制をしても、有害情報の圧倒的多数を占める海外のサイトは取り締まれない。今時こんな時代錯誤の法案が国会に出されるのは日本の恥だ。
規制強化の先頭に立っているのが、新聞の特殊指定騒ぎのとき、新聞業界の提灯持ちをつとめた高市早苗氏だ。新聞の既得権は守るが、インターネットの表現の自由は圧殺しろというわけだ
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/4aee54f5a00a190bb3af575b34780be7

http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/f9a907ff7686abe56706da31d1932c5a

たとえば有名な巨大掲示板である2ちゃんねるなどもアメリカにサーバがあるという話は有名です。実は2ちゃんねるだって海外サイトなわけです。この法律では2ちゃんねるを未成年に見せなくする事はできないでしょう。
フィルタリングソフトにしても、回避手段はいくらでもあります。未成年の間で回避手段が流通するだけで終ってしまうでしょう。
ようするに税金を使って無駄な仕事を発注する事になるわけです。
ネット料金が高騰し、政治家の懐に入る法案が審議されてる!?:らばQ

osakana.factory - 日本の子供たちからインターネットが消える日
http://diamond.jp/series/machida/10023/


……本当に,ダウンロード違法化で敗戦してからというもの,モバイルフィルタリング,児童ポルノ規制,そして今回のネット規制と続けざまに宣戦布告されている.しかも,どれも旗色が悪いときている.
何か箍が外れてしまったのだろうか,関を切ったように規制推進派の波が押し寄せてきているようで,いろいろピンチである.

サイバースペース独立宣言

今回のネット規制はまさしく池田信夫氏が指摘している通りCDAと同じである.そして,このCDAが成立したその日(1996/2/8)にネット側の意見として発表された「サイバースペース独立宣言」というものがあるのだが,これが非常に面白い.

サイバースペース独立宣言
我々は選挙によって選ばれた政府など持たないし、また持つ気もない。従って、私がお前たちに向かって語りかける言葉には、自由が常に語ってやまぬ言葉以上のいかなる権威も含まれていない。そこで私は宣言する。我々が建設中のグローバルな社会空間は当然ながらお前たちが押しつけようと画策する専従体制からは独立している、と。お前たちは我々を規則で縛ることが出来るような道徳的な権利など持っていないし、また我々が真に恐れるに足るようないかなる強制手段も持ち合わせてはいない。政治は統治される国民の同意があって初めて力を持つ。お前たちは我々の同意を促すこともできない。我々はお前たちを歓迎しない。お前たちは我々のことを知らないし、我々の世界も知らない。
(中略)
お前たちが考える、所有、表現、自我、運動、前後の関係(コンテクスト)に関する法的概念は我々には適用されない。それは物質に基づくものだからだ。我々の世界に物質は存在しない。
(中略)
お前たちは自分たち自身の子供に脅えている。子供たちはサイバースペースのネイティブなのに、お前たちの方はいつまでたっても根付かぬ移民のままだからだ。この子どもたちを恐れるがゆえに、お前たちは、自分たち自身では卑怯にも真正面から引き受けることの出来ない親としての責任を官僚たちに委ねるのだ。

この「子供たちはサイバースペースのネイティブなのに、お前たちの方はいつまでたっても根付かぬ移民のままだからだ。」という台詞はカッコいいし,今でも通用するだろう.が,10年以上前とは状況が大分違い,「ネットのことはネットでやるから構わないでくれ」という考え方にはズレを感じてしまう.
何故なら,Googleは確実に人々の情報に対する認識を変えたし,生き方も変えた.YouTubeP2P著作権という概念を根底から揺さぶり,ネットはリアルの世界をどんどん変えていったのだから.ネットは「ネットに構うな!」と言いつつも,リアルに対して人畜無害だった訳でなく,リアルの世界を凄い勢いで侵略していったのだから,リアルの世界がリアルの世界の方法と信念で反発してくるのは道理だ.

なぜ政治家たちはネットに来て我々ネットユーザーに聞いてくれないのでしょうか。
ネット料金が高騰し、政治家の懐に入る法案が審議されてる!?:らばQ

とか

俺はね、政治的な活動って、大嫌いなんだよ。絵描いてる方が好きだし、実は高校の頃は音大目指してたくらい音楽も好きなんだ。上手い飯食うのも作るのも好きだし、一応まだ学生でもあるから、調べものしてたり、あとコード書いたりするのとか、そういう方が何倍も好きだし、お金にもなる。MIAU のような活動、別に一銭にもなっとらんのだ。
でもさ、児童ポルノ法の改正案もムカついたけど、この法案には反吐が出る。分かったよ、政治活動って、こういうのが原動力になってやることだったんだね。だから、がんばって騒ぐことにする。
osakana.factory - 日本の子供たちからインターネットが消える日

なんて言葉を見るとやっぱり違和感を覚える.
何故,ネットはこんなに政治に対して消極的な参加しかしてこなかったのだろうか?ビジネスやライフハックや表現といった分野ではどんどんリアルを侵略していったのに,何故,政治のこととなると,こんなにも受身なのだろうか?と.
サイバースペース独立宣言」で示したように,「ネットはネットの中でやるから」という方向から「リアルを積極的に侵略する」方向にいつの間にか舵を切っていたのだから,やっぱり歯を食いしばっても,積極的に政治にコミットするべきだったのではないか?
(正直,今回のバカバカしいネット規制は,ネットに詳しいブレーンが政府に一人でも入っていればそのバカバカしさに気づく程度のものだし,福田さんもしくは小沢さんに直接電話で話すこのとできるネット民がいれば,優しく諭すことができる問題だろう.そう思う.)