初音ミク問題 クリエイター側にも非はあるだろう

ここ数日ネット世界でふたつの大きな問題が出てきた.一つは私的録音録画小委員会:「ダウンロード違法化」不可避に - ITmedia NEWSという問題,もう一つは初音ミク、JASRACデビュー:CloseBox & OpenPod:オルタナティブ・ブログである.
このどちらも混沌としてしまっていて,現時点で判断できることが少ないのだが,とりあえず初音ミク問題について考えたい.

JASRACデビューは何が問題なのか

もちろん一番最初に考えるのは

「みくみく」JASRAC登録で「手違い」 ドワンゴ・ミュージックが謝罪 - ITmedia NEWS
「みくみく」がJASRAC管理楽曲になったことで、ネット上では「みくみくを使ったMAD作成にも著作権料が発生することになり、自由な2次創作ができなくなる」といった指摘があった。

という事態だけれど,別にJASRACに登録されること」=「自由な2次創作ができなくなる」わけではなく,JASRACが節操の無い権利を行使し始めたらできなくなるのである.そして私はJASRACがそこまで阿呆で無いと思っているので,大丈夫だと信じたい.
それに

[VOCALOID2情報] CV02「鏡音リン・レン」発売日決定!! – SONICWIREブログ
才能あるクリエイターに正当な注目が集まることは大変喜ばしいことです。その様なクリエイターが多く育って、そして正当な対価を得られるようになることが、次のクリエイションを産むためには必ず必要です。しかし、現状の著作物利用料の分配の仕組みは、JASRACなどの仲介を得てはじめて実現するようです。例えばカラオケで「みくみく〜」が配信されてますが、どれだけ歌われようが、JASRACなどの管理がなければ悲しいかな分配ゼロです。

http://blog.nicovideo.jp/niconews/2007/12/000733.html
ニコニコ動画からは、多数の隠れた才能が開花しており、これらの優れた作品が世に受け入れられ、支持を受けることは非常に喜ばしいことであると当社は考えます。しかし、これらの作品は、作者の英知の産物でありこれが一般ユーザ−の私的交流の範囲を超え何らかの形で商品化された場合に、作者にその対価が支払われることは当然のことであると考えます。

という考えもある.「クリエイターに正当な対価が還元されるような仕組みを構築したい」とクリプトン社とニワンゴが夢想しているのであれば,JASRACに登録することも止む無しという考え方はある程度妥当だと思う.

楽曲を無許可配信

JASRACの問題は,この先どうなるかによって決まってくると思うので,次の問題に移る.

http://japan.cnet.com/blog/arasuji/2007/12/20/entry_25003210/
『着うたの話が来たときに「契約が無事締結されたら配信開始して下さい」とお願いしていたにも関わらず、無断である日突然着うた配信されてしまい、すぐに抗議して今は配信停止になっている。』
(中略)
また別の作者は、 『着うた化したいというメールがドワンゴから届き、「クリプトンかフロンティアワークスいずれかとの契約後、配信の流れになる」と説明され、この2社にメールアドレスを教えることを承諾した後、しばらく音沙汰が無く、その後、ドワンゴから配信準備のために先にwavだけ下さいという旨のメールを受け取った。ここでマスターのwavファイルを送ったところ、いつの間にか配信が開始されていた。』

この疑惑が本当なのかどうか知らないが,本当なら問題だろう.

しかし,ちょっと待て……なんか今回の事件はニワンゴが悪者で,クリエイターが被害者,という構図になりつつあるけれど,そもそもクリエイター(みっくみっくを作った人も含めて)たちも,黒ではないけれど,グレーだったはずだ.

初音ミクの使用許諾

初音ミクの使用許諾を解説してくれているエントリを読み返してみると

http://chikura.fprog.com/index.php?UID=1192519943
つまり、BGMに初音ミクで作った曲を流しながら、(初音ミクに限らず)何らかのキャラクターがそれを歌っているかのように口パクさせた場合、その曲がオリジナルだろうがなんだろうがNGということになります。
 ニコニコ動画のほとんどはこれにひっかかります。特に商用という指定もないことから、非商用であってもNGだということが分かります。まぁ、そもそも初音ミクのキャラクターを無断使用している訳で、ヴォーカル・データうんぬんの話以前の問題なのですが…。もちろん、初音ミクではないオリジナル・キャラクターでもNGになります。

ということだったはずだ.
つまりこの一連の事件はクリプトン社とJASRAC以外,ほとんどの関係者がNGである.「みっくみっく〜」を作ったika氏もニワンゴも含めて,何らかの違反を犯している.


なんというか,自分の違反を棚に上げて,ニワンゴをブーブー非難するのも如何なものか*1…という状況だと私は認識している.正直クリエイター側も相当にヤクザなことをやっている.(この『クリエイター』は,初音ミクのオリジナル曲を作っている人々の一部と,それを擁護しようとしている人々を指している.ほとんどのクリエイターさんは心根の優しい方々ばかりだと私は信じている)*2
……基本的にクリプトン社がどう動くかによって決まってくるのだろうけど……

おまけ

http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1069273.html

http://chikura.fprog.com/index.php?UID=1192519943
(1) お客様が公序良俗に反する歌詞を含む合成音声を公開又は配布する事は、いかなる場合においても禁じられています。

とクリプトンは言ってるわけだから,初音ミク関連でエロはだめなんだろうw

追記(12/23)

クリプトン伊藤社長の「態度」: たけくまメモ
このエントリが便利すぎる.要するに契約前に配信するのも,権利を取り上げるのも当たり前なことで,素人が素人的な対応をした…って感じか.


(コメントレス)
たとえブログやなんかで使っていいですよ〜黙認しますよ〜って言っていても,契約書でやりとりしてなきゃグレーだろう.絵師が描いた絵もクリエイティブ・コモンズとか表記しなきゃだめなんじゃないか?



「初音ミク」の著作権者はどこまで作曲者の権利を制限できるか - ものがたり

*1:みっくみっくの人は非難してないと思うけど

*2:ほんと,白黒はっきりしないから,スッキリしないなぁ.オタク文化(2次創作)をどうやって商業的に取り込むか?皆が納得するオチをどうつけるか…なんだろうなぁ.とりあえず初音ミクは良い商品になってほしい.