考えることのできないオタク(考えなくてもよいオタク)

「最近のオタクはものを考えてない」
「最近のオタクは、作品を貶すと『やってないからだ、やればわかるよ』と云う」
「最近のオタクは、作品のどこがどう面白いのかを説明できない」

先ずこの現状理解から話を始める。
もちろん「そんなこと無いよ?」とか「いつの時代もそうじゃないか」とか反論はあるけれど、今回はこの前提を共通の現状理解としたい。

思考装置としてのネットワーク

はてなスターに対しての言説そして今後 - WebLab.otaで紹介したけれど、最近は”人気のある記事”や”面白い記事”なんかを「はてなブックマークの数」で計算したり、Google PageRank では”よいページ”や”信頼できるページ”をPageRank という数字で表したりする。
Google PageRank は『”良いページからリンクされたページも良いページ”という原則に従って、Web 上の大量のページ間の関係から計算で求められる』ものだ。もちろんそれだけではなく複雑なアルゴリズムを駆使して(行列で処理しているようなのだが、あまり詳しく知りません。隣接行列とか遷移確率行列とかいろいろとページランク - Wikipedia)、求めるわけだけれど、今回は「Google PageRank」も「はてなブックマークの人気記事」もネット上の複雑に絡み合ったリンクの関係で求められるという理解で十分である。*1
これに対を成すものとして存在する中央集権主義的なメディア、それはテレビであったり一人の作家であったり新聞記者であったりするわけだが、彼らが発信する”人気のある店”、”話題の本”、”注目されている話題”などの情報に対して、代表民主制で行われている政治に対して感じる不信感と同様に、差異を感じる若い世代がGoogle PageRankはてなブックマークのような直接民主主義で価値判断をしているネットを支持するのは解る気がする。
まぁこれ以上の話は現在各所で行われている『Web2.0的な考え方』を信頼するかどうか?とか、愚衆化するのではなかろうか?みたいな議論に入ってしまうので横に置いて。ともかくネット上では価値判断をネット上に張り巡らされたリンクの”偏り”で計算して、誰かが考えたり、理論的に説明したり解説したりするわけではなく、ネット上の状況判断がそのまま”価値”に変換されてしまっているという状況が少なくともある。

オタク論

私個人的な理解では、オタク達は中央集権メディアを信頼できずに、独自の価値基準の構築を目指し、その価値基準を収集した膨大で雑多な知識と膨大な時間をかけて無理矢理理論武装した趣味集団だと考えているのだけれど、最近のオタクたちはそうではないらしい。私個人的な経験に基づくものだが

「あのアニメ面白かったですよね〜」
「どこが?」
「今回の話は○○が登場して、カッコよく敵を倒してうんたらかんたら(時としてそのギャグの説明をされる)」
「いや、そんなあらすじを説明されても…」

とか

「あのアニメよかったですよね〜」
「どこが?」
「萌えるじゃないですか〜」
「いや、わかんない」
「それは見て無いからですよ」(時として元ねたを知らないからだとか云われます)
「(見ても解らなかったからだし、説明を要求したのに答えてくれんのか…)」

という状態に陥ることが多い。
しかし、私の知る”本物のオタク(これ以降は旧オタクと称する)*2”はこういった質問をするとスタッフの話や歴史の話はもちろんだが、そのアニメで行われている実験性や同じ実験性をもった作品に対する説明、ストーリを分析して物語の系譜から説明してくれたり、「そもそも物語りっていうものは…」とか「そもそも笑いの原型となるのは…」とか延々と説明してくる。


いきなり結論を出すが、新旧のオタクは『中央集権メディアを信頼していない』ところで共通している*3。そして『独自の価値基準の構築を目指した』ところでも共通している*4。しかし大きく違うのはその価値の判断をする場所を内に置くか、外に置くかで大きく違う。
膨大で雑多な知識を内に置き、その中から価値のある知識を独自の価値基準*5で判断するのが”旧オタク”であり、膨大で雑多な知識をネット上に置き、その中から価値のある知識をネット上のアルゴリズムで判断するのが”新オタク*6”ではなかろうか?
そして、旧オタクはその価値基準が”独自”であるがために、理論武装を必要とし、新オタクの価値基準はWeb2.0であり、Googleが生み出したアルゴリズムであり、新オタクの作り上げたコミュニティ(ネットワーク)であるわけで、個での理論武装を必要としていないのではなかろうか?
そんなことをボーっと考えている。



読んだもの・読もうと思っているもの
インターネットを楽しむ人達って、そんなにお利口なんですか? - シロクマの屑籠
http://d.hatena.ne.jp/gamma_ut/20070709/1183993745
Wikipediaが検索上位表示される理由 - vanswの日記
会社に勤めるということ。 - shibataismの日記
論文探索がおもしろすぎる - ミームの死骸を待ちながら


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ウェブ情報技術の視点からオタク文化を分析・解体 第一回まとめ - WebLab.ota

*1:はてなブックマークは単純にリンクの数だけですが

*2:何をもって本物とするか?はこれもまた置いておく

*3:だからこそ彼らはニュースを嫌う

*4:広義の意味ではこれがオタクの定義なのかもしれないな〜

*5:それはもう人それぞれ

*6:第三世代オタクとかよばれる存在