真下耕一監督なのに、何故『エル・カザド』は面白いのか?

あの真下耕一監督作品である『エル・カザド』が、何故面白いのか?不思議でしかたがない。
私の真下体験はタイラーあたりからになるため、押井守らと共に「タツノコ四天王」と呼ばれ、カリスマ的扱いをされていた頃の記憶はない。
この記事を読んでいる人の多くも、そんな人が多いのではないだろうか?
そういった世代には、“真下耕一”といえば『NOIR』から始まる”2人の少女が旅をする一連のアニメ”で記憶されているはずだ。(1)
あまりに独特な間や演出のために、敬遠されがちな“真下アニメ”と。
ポポロクロイス物語』や『砂漠の海賊!キャプテンクッパ』などの牧歌的な子供アニメを作っている人間とは思えないほど、露悪的でエンターテイメント性の欠片も無い“真下アニメ”と…
(この二面性を手塚治虫に習って、今後“白真下”、“黒真下”と表すことにしよう。)

さて、今回話題にする『エル・カザド』は明らかに『NOIR』の血を受け継ぐ、“黒真下”の作品であるにもかかわらず、面白い(真下にしては面白い)。
何故だろうか?

スタッフ

ま、普通にスタッフから考えてみよう。

NOIR
• 監督・音響演出:真下耕一
• 企画:佐々木史朗
• プロデューサー:北山茂
• 原案・構成・脚本:月村了衛

• キャラクターデザイン:菊地洋子芝美奈子・宮地聡子
メカニカルデザイン寺岡賢司
• 音楽:梶浦由記
• 音楽ディレクター:福田正夫

.hack //SIGN(参考)
• 監督:真下耕一
• 企画:
• プロデューサー:
• シリーズ構成:伊藤和典
• 脚本:伊藤和典横手美智子沢村光彦真下耕一
• キャラクターデザイン:大澤聡、番由紀子、岩岡優子、芝美奈子 キャラクター原案:貞本義行
メカニックデザイン:寺岡憲司、岡辰也
• 音響演出:なかのとおる
• 音楽:梶浦由記
• 音楽プロデューサー:野崎圭一

Avenger
• 監督:真下耕一
• 企画:
• プロデューサー:池田慎一・森本浩二・里見哲朗
• シリーズ構成:きむらひでふみ
• 脚本:きむらひでふみ沢村光彦、杉村さとみ
• キャラクターデザイン:番由紀子 キャラクター原案:田上俊介
メカニックデザイン寺岡賢司
• 音楽:ALI PROJECT
• 音楽プロデューサー:石川吉元

MADLAX
• 監督:真下耕一
• 企画:佐々木史朗
• プロデューサー:北山茂・浜元達哉
• シリーズ構成・脚本:黒田洋介
• 脚本:
• キャラクターデザイン:大澤聡・芝美奈子・宮地聡子
メカニックデザイン寺岡賢司
• メカニック作画監督:才木康寛
• 音響監督:なかのとおる
• 音楽:梶浦由記
• 音楽プロデューサー:野崎圭一

エル・カザド
• 監督:真下耕一
• 企画:佐々木史朗、板橋徹
• プロデューサー:北山茂、青木真美子
• シリーズ構成:金巻兼一
• 脚本:
• キャラクターデザイン:菊地洋子
• メカデザイン:肥塚正史、寺岡賢司
• 音響監督:なかのとおる
• 音楽:梶浦由記
• 音楽プロデューサー:野崎圭一

っと、こうなる。
Wikipediaから必要になりそうなデータを引っ張ってきた。
ここで一番目につくのは「金巻兼一」の名だ。
他はほぼ共通するスタッフを使っているので、おそらく“これ”だろう、と当たりを付ける。

『NOIR』月村了衛は作家性が強いタイプの作家でない気がするし、『.hack//SIGN』の伊藤和典は、『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』(脚本)で、多分暗い話が好きな人。
Avenger』のきむらひでふみは、『AIKa』(1997年、メカニックデザイン)・『地球防衛企業ダイ・ガード』(1999年、SFコンセプト)・『アベノ橋魔法☆商店街』(2002年、設定デザイン)と、根が設定の人。
MADLAX』の黒田洋介は『スクライド』・『極上生徒会・『ハチミツとクローバー』・『HELLSING OVA版』など、いろいろなジャンルを書ける“仕事上手”な人なので、真下の要求どおりの脚本を書いたのだろう。

流石、金巻。黒真下をエンターテイメントさせてしまうほどの、才能の持ち主なわけだ。

書いてみたら、大したことない結論になってしまった。

注釈

(1):あの暗い感じの世界観を作り出したのは、本当は『EAT-MAN』から始まっている。